top of page

フランスラグビー協会悲願のラグビー専用「国立競技場」建設なるか

2014/08/09

 総工費6億ユーロ。82000人収容のスタジアムは開閉式の天井に、コンサート、モトクロス、クロスカントリースキーなど何でも受け入れられるよう移動収納式のグラウンドを備え、「観戦客」以外の客も引き寄せるべくショッピングモールや博物館を併設。設計はカーディフのミレニアムスタジアムやダブリンのアビバスタジアム、ウェンブリーなど今や世界中のスポーツ施設を設計するポピュラスが担当。パリ郊外エブリー市の競馬場跡地に建設予定の「フランスラグビー協会所有」のスタジアムは、協会、そして現会長であるピエール・カムーの積年の夢である。

 

 現在フランス代表のテストマッチが行われるのは主にフランスの国立競技場であり、サッカーフランス代表のホームグラウンドでもあるスタッド・ド・フランス。政府から委託契約を受けてスタジアムを運営しているブイグとヴィンチとの契約を2017年まで残しているフランスラグビー協会は、1試合ごとにおよそ110万ユーロでスタジアムを借りている。フランステニス協会が、金のなる木であるローランギャロスを自ら所有していることでその興行収入をすべて直接懐に入れられるのとは違い、自前のスタジアムを持たないフランスラグビー協会は試合の度にスタジアムを満員にしながらもその利益を現状では存分に活かせていない。協会所有のスタジアムの建設は、そんな現状から抜け出し協会の更なる経済的独立を強め、思うように代表のスケジュールを組めるようにするためのジョーカーとなる。

 

 協会側はざっと見積もって、イベントでの収入で1000万ユーロ、それにネーミングライツで500万ユーロを年間収入として見込んでいるが、単なる収入増加だけが目的ではない。その視線の先には、協会の経済力の強化のよって現在フランス国内で力を持つ金満クラブに対抗し、あわよくばニュージーランドやオーストラリアのように協会が代表選手と直接契約を結び、代表の活動を優先させることが出来るように環境を整え強い代表をつくりたいという思惑がある。

 

 しかし、不況の真只中にあり緊縮財政を強いられている政府のゴーサインがいまだ出ない。6億ユーロを見積もっている総工費のうち、2億ユーロをフランスラグビー協会が直接負担、残りの4億ユーロが関連地方自治体からの借入金となること自体には問題はない。懸案は、今回のプロジェクトが単なるスタジアムの建設に留まらず当然エブリーの街全体の再編計画を伴うものとなり、必要な公共交通網の整備に少なくともさらに6億ユーロが見込まれ、それが国と地方自治体の負担となること。また、パリ郊外の他地域も当然のように再開発を望んでおり、エブリーにだけ多額の資金が下りるのをよく思わない向きも多く、政治的な駆け引きが続いていて予断を許さない。一番の希望は、現首相であるマニュエル・ヴァルスが元エブリー市長であり、強力に今計画を推していることか。

 フランスラグビー協会はスタッド・ド・フランスとの2017年での契約終了を見越して、2018年のスタジアムの完成を目指しており、今年終わりにも工事を着工させたいところ。残された時間は多くなく、「ラグビーのカテドラル」を建立すべく、スクラムよりも難解な駆け引きが至る所で続くことになる。

Please reload

Copyright (c) kosuke hakoyama. All rights reserved.
本サイト内の記述、画像、写真の無断転載・転用を禁止します。

bottom of page