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トップ14とサラリーキャップ

2014/04/21

 今、世界のトップレベルのプロラグビーリーグの中で最もリッチなのが、フランスのトップ14(わざわざ「トップレベル」のと加えたのは、日本のトップリーグには、それ以上の大枚を積んで外国人選手を呼び寄せることが出来るクラブがあるため)。停滞気味の自国代表に反比例するかのごとくリーグは盛況、スーパーラグビー、プレミアシップ、プロ12からスター選手を引き抜き、各国代表、または元代表を世界中から呼び寄せ質の高いゲームを提供、トップクラブはヨーロッパレベルでも投資に見合った結果を出している。昨年のハイネケンカップの決勝はトゥーロン、クレルモンというフランスのクラブ同士の決勝となり、今年も今現在両チームは準決勝まで進んでおり、今週末に行われる試合の結果次第だが、ヨーロッパ最高クラブを決める決勝は、昨年と同様のカードになる可能性も高い。

 

 それでも、近年うなぎ上りだった選手の年俸は、来期よりのサラリーキャップの導入が決定していることもあり、ここ2年はその上昇カーブに歯止めがかかっている。昨年は、リーグのプロ化以降初めて選手の平均年俸が前年比で15%のダウンを記録、1部にあたるトップ14と2部リーグにあたるプロD2の選手の平均年俸はほぼ13万2000ユーロ(日本円でおよそ1870万円)だった。

 

 そんな中、今年初頭にフランスのプロリーグを統括する国内ラグビーリーグ機構は、民間有料放送チャンネルであるカナルプリュスと、来シーズンからのトップ14の新たな独占放映権契約を結んだ。その金額は、年間7100万ユーロ(およそ100億5000万円)。3170万ユーロだった今季までから、2倍以上の増加であり、それがまた現在のトップ14の成功を示している。

 

 それにともなって、各クラブに配られる分配金も150万ユーロ(およそ2億1000万円)ほど増える見込み。ならば、その分で新たなスター選手の獲得を各クラブが狙っているかというと、どうもそう簡単にもいかないらしい。「2、3年前のレベルには戻っていない」とあるエージェントが言うように、現在の移籍市場で提示される額は停滞状態(といっても他国に比べれば恵まれているのだが)。年俸50万ユーロ以上(およそ7000万円)の契約は提示されていないというのが現状のようだ。来季からのトップ14への参戦が決まっている元イングランド代表のスタンドオフトビー・フラッド、オーストラリア代表の問題児ジェームズ・オコナー、今や世界最高のフルバックの呼び声も高いウェールズ代表のリー・ハーフペニーらは、既にトップ14でプレーしている、ブライアン・ハバナやマット・ギタウ、バッキース・ボタよりも「薄給」でプレーすることになるが、その理由がサラリーキャップ。違反があった場合には、経済制裁のみに留まらず勝ち点の剥奪もありえるので、いかに予算に余裕のあるクラブと言えども従わざるを得ない。

 

 ただ、リーグによって定められた1000万ユーロ(およそ14億1500万円)のサラリーキャップの上限は、新たな放映権契約が締結されるはるか前に決められたもの。「あれは経済危機の時のサラリーキャップ。今、トップ14のクラブが手にする放映権収入の分配金を考えれば、サラリーキャップの見直しも当然おかしなこととは言えない」とリーグ機構の理事も語っており、既にほぼサラリーキャップの上限に達しつつある有力クラブもその見直しをリーグ機構に迫っている。トゥーロン、トゥールーズ、ラシン・メトロ、モンペリエといった裕福な上位クラブは「リーグをより魅力的なものにするため」に、サラリーキャップの上限引き上げを求めているが、一方で金銭的に余裕のないトップ14のクラブ、及び2部のクラブ全体は戦力均衡を盾に反対の構えをとっている。リーグ全体のバランスとクラブの経済基盤の確保はリーグの安定には欠かせないが、近年大幅な資金投入を行ったいくつかのクラブが魅力あるチーム作りに成功し、それがトップ14の成功を後押ししファンを惹き付け、ひいてはリーグに高額の放映権契約をもたらしたことは確かである。来期に向けてリーグ機構がどのような判断を下すのか。この先のトップ14の在り方とその成功を占う上でも、その決断が注目される。

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