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神童は蘇るのか。—ジェームズ・オコナー、ワールドカップへのラストチャンスに懸ける—

2014/07/17

 サイズがないという理由だけで年代別代表に選出されないのを見かねた父親からの助言で、14歳で10年間親しんだ13人制ラグビーから15人制へ転向すると、あっという間に頭角を現し、2008年5月3日に、ウェスタン・フォースでスーパー14史上最年少の17歳と303日でデビュー。半年後の11月にはワラビーズで初代表キャップを飾り、23歳までに既に44キャップを獲得。スタンドオフ、インサイドセンター、ウィング、フルバックをどれもハイレベルでこなすそのポリバラントなプレーぶりも合わせ、まさしく神童と呼ばれたジャームズ・オコナーとの契約をオーストラリアラグビー協会が解除したのが2013年9月。フォーネイションズの試合のために代表チームが集合していたパースの空港に酩酊状態で現れ、警察に連行されるはめに。それまでにも何度かアルコール絡みの問題をグラウンド外で起こしていたオコナーに対して、協会はついに契約解除に踏み切った。

 

 行き場をなくしたオコナーが選んだのはヨーロッパ。2013年10月にプレミアシップのロンドン・アイリッシュと契約し、シーズン終了後までに15試合に出場、プレースキッカーも務め、個人通算100得点を挙げてチームに貢献すると、ワールドカップイヤーとなる今シーズン、代表復帰の最後の望みをかけて、2年連続ヨーロッパチャンピオンのトゥーロンへ移籍した。ただし、ワラビーズに選出されるためには、母国オーストラリアでプレーしなければならない。契約が正式に発表される以前から、トゥーロンには半年の腰掛けで、スーパーラグビーの新シーズンの幕が開ける来年2月には母国に戻って、クイーンズランドレッズでプレーするという噂も聞こえている。「ここには1年契約で来ている。その後はどうなるか見てみるよ。ワールドカップに関しては、自分自身でもどうなるか分からないから今は大したことは言えない。ただ、もちろんワールドカップでプレーして、再びオーストラリアのジャージを纏いたい。ただ、多くのルールがあるからそう簡単じゃない。可能かどうか、協会側と話し合いを続けていくよ。今のところは、ここトゥーロンで自分の仕事に集中したい。それで、また新たなタイトルが獲れることを望んでるよ」と、トゥーロンのシーズン練習初日となった7月7日に本人は答えている。以前の素行の悪さに話を向けられると、「もう終わったことで、過ぎたことだよ。ここでは、最高の環境が用意されている。いいプレーをしてタイトルを獲ることに集中しているよ。そうするためには最高の場所にいると思う」と、デビュー当時のチームメイトであったマット・ギタウとドリュー・ミッチェルの存在も挙げ、新シーズン、その先にあるワラビーズへの復帰の意気込みを新たにした。

 

 一方で、現オーストラリア代表監督であるユアン・マッケンジーも先月末、オコナーにまだチャンスが残されていることを明言した。「彼はXファクターを持っていた。アッタクで何かを起こすことができる。ゲームに必要なことはすべて出来るし、いいプレースキッカーでもある。非常に完成された選手だし、経験も豊富。40ちょっとのキャップをあの若さで獲得したんだ。そのまま続ければ簡単に100キャップを超えるよ。挑戦だよ。以前持っていたものを、取り戻さなければいけない。」と、オコナーの才能とセンスを評価する。「連絡は取っていた。私は彼に対して扉を閉めてはいない。彼は去ってしまっていたけど、今、自身の間違いを直して、生活を変えようとトライしているところだ。話してみて、代表に戻ってくる意思をはっきりと感じたよ。彼が戻ってきても私にとっては何の不思議もない。ただ、それは彼自身がすべて上手くやれるかにかかっている」。

 

  オコナーが最高のパフォーマンスを取り戻すことが出来れば、ヨーロッパ3連覇を目指すトゥーロンにとっても、ワールドカップ本大会でイングランド、ウェールズ、フィジーと同組となったワラビーズにとっても、大きな武器になるのは間違いない。あとは本人がどこまで変われるか。アルコールの誘惑に負けて天賦の才を潰すのか。代表キャリアの第2幕を上げ、100キャップを超えて伝説になるのか。マッケンジーが言うように、必要なものはすべて持っている。あとは、まだ若い24歳のユーティリーティーバックの意思次第だ。

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