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489億円の放映権戦争 —過去にない人気を見せるトップ14。フランスラグビーリーグ、公正取引委員会から勧告を受ける—

2014/08/03

 フランス公正取引委員会は、国内のプロラグビーを統括するフランスラグビーリーグに対して、今年1月にフランスの有料放送局であるカナルプリュスと結んだ2014年から5シーズンに渡る、総額3億5500万ユーロ(およそ489億円)の独占放映契約を凍結するよう命じた。

 

 昨年12月2日、フランスラグビーリーグはトップ14の高まる人気を後ろ盾にあと2シーズン残っていたカナルプリュスとの独占放映契約を一方的に破棄。それまで年間約3200万ユーロだった放映権料の大幅アップをもくろんで、2014年から2018年シーズンまでの新たな契約の入札に踏み切った。これを受けてカナルプリュス側が大審裁判所に提訴。フランスラグビーリーグ側が契約破棄直前に水面下で新たな契約の最低条件として年間6600万ユーロを求めてきたことを訴えるも、最終的には両者の思惑が一致したのか、1月10日、フランスラグビーリーグは入札期限まで3日を残して入札を閉め切ることを発表。4日後には3億5500万ユーロのカナルプリュスとの「歴史的」な新契約が発表された。

 

 これを受けて同様にトップ14の放映権を狙っていた、カタール、アルジャジーラ系列の新興のフランス有料スポーツ放送局であるビーインスポーツが公正取引委員会に提訴。7月30日に、フランスラグビーリーグの手続きにおいて公正な競争を妨げる動きがあり、「有料放送とその消費者に対して直接的で甚大な損害」をもたらしたとして、公正取引委員会はカナルプリュスとの契約の凍結を指示。今シーズンの放送に支障を下さないようにするため、今季の契約はそのまま履行されるが、公正取引委員会は新たな入札を来年の1月31日までに行うよう要請した。また「不正な取引でビーインスポーツ側にも同様に損害を与えた」とし、フランスラグビーリーグに経済的な制裁が課される可能性も残っている。

 

 昨年末にフランスラグビーリーグが契約破棄を発表して以来、この話題がメディアを賑わしていたが、どうにもうさんくさい動きがあるのは誰の目にも明らかだった。強欲なフランスラグビーリーグが金に目が眩んで強引にやり過ぎたという見方も出来るが、新たな放映権料に関しては、現在の市場規模を鑑みれば妥当なもの。それよりも、古くて固い頭の首脳陣が、望んでいた通りの契約が取れたとたんに自由競争を無視して、脅しに折れた1995年以来テレビ放送してくれている「旧友」であるカナルプリュスと手打ちをしたことが問題。実際、入札義務があるものは、サッカー、ラグビーのワールドカップ、オリンピック、リーグアン(フランス国内サッカーリーグ)、F1、テニスの4大大会などの「特別」なコンテンツに限られており、入札義務のない小さいコンテンツに関しては直接交渉は認められており、トップ14に関しても以前は同様だった。それが今回、公正取引委員会が下した判断はそれを覆し、トップ14は上記の「プレミアム」なコンテンツと同等の位置付けにあるということを示すもので、現在のトップ14の経済的成功と人気を裏付けるものとなった。

 

 今や、日本と並び最も高い契約でもって世界中からトッププレーヤーを集めるトップ14。もっと高く売れるはず、と吹っ掛けてみたものの、結局自らの商品価値の本当の大きさを見極めていなかったのは自分たち自身。フランスラグビーリーグとカナルプリュスは高等裁判所への上訴を検討しているが、一部のお偉いさん方が牛耳る一昔前のような、コネのまかり通る身内主義が蔓延る現体制が改善されない限り、これ以上のトップ14の発展は望めない。

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