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ワールドカップに向けたトリコロールの秘密兵器ついに解禁か? —ロリー・ココット3年条項を満たす—

2014/08/05

 ロリー・ココットはやっぱり無視された? 

 

 ラグビーチャンピオンシップに向けて各国の代表が発表されるなか、南アフリカ代表監督のハイネケ・メイヤーはスコットランド戦で負傷したフーリー・デュプレアの代わりに、ルアン・ピナール、フランソワ・ホーハートに次ぐ3番目のスクラムハーフとして、コーバス・レイナーを招集。ここ3年フランストップ14でナンバーワンのスクラムハーフと評されているロリー・ココットにはまたもお呼びは掛からなかった。ニュージーランドやオーストラリアと違い、南アフリカラグビー協会は代表選出の条件として国内リーグでプレーすること課していない。実際、プロ12でプレーするピナールや、プレミアシップサラセンズのシャルク・ブリッツ、トップ14からはバッキース・ボタやブライアン・ハバナらが招集されている。いくらレイナーが有望株といっても、現状ではココットには及ばない。じゃあ、どうして?

 

 2012年6月。前シーズンにスーパーラグビーのライオンズからカストルに移籍していたココットは、フランス1年目のシーズンのパフォーマンスが評価されてスプリングボクスへの初めての召集を受けた。しかしこれを「自宅での軽い怪我」と何とも不可解な理由で辞退。それ以来、2年目のシーズンにはカストルをトップ14優勝に導き、3年目の昨シーズンも決勝まで駒を進める活躍を見せていながら、代表からの招集はない。実はこの「招集拒否」、すでに2年後のフランス代表でのプレーを見越しての伏線だった。スーパーラグビーでプレーしていた頃は代表に呼ばれることがなく、トップ14のカストルに新天地を求めたココット。母国を離れた1年後に初めての代表招集を受けたわけだが、デュプレアとピナールが一緒では、1番手のハーフとしてプレーすることはないと踏んだはず。ならば自分を受け入れてくれた国の代表としてレギュラーでワールドカップに出られる可能性があるのなら、そっちを選ぶのも頷ける。また、南アフリカ協会からの当時の招集も、その必要性以上に、ココットをフランス代表にさせないために南アフリカ代表としてとりあえずキープするための策だった感が強い。実際にフランスラグビー協会の側から秘密裏にココットにコンタクトがあったかは定かではないが、フランスのメディアではすでにこの時点で2年後のココットのフランス代表デビューの可能性を語っていた。この招集拒否が、スプリングボクスに背を向けてトリコロールのジャージを目指すという、 ココットからの無言のメッセージだったわけだ。そして、南アフリカラグビー協会も、フランスラグビー協会もそれをしっかり理解していた。

 

 ひと月程前に3年条項を満たし、ついにフランス代表のジャージを着る資格を得たココット。いまやその正確なプレースキックも含めてフランス国内ナンバーワンスクラムハーフの地位をしっかりと固めている。もはやココットがスプリングボクスでプレーする意味は何もない。デュプレアの怪我があったとはいえ、来ないとわかっている選手をわざわざメイヤーが呼ばないのも当然だろう。

 

  以前レギュラーハーフだったモルガン・パラは怪我と出場停止もあり昨季は低調な出来。代表でもクラブでもハーフとスタンドオフの両天秤で使われ続けてきたフレデリック・ミシャラクは、ジョニー・ウィルキンソンの引退を受けて今季こそトゥーロンで自らの望むスタンドオフとしての復活を期しており、若手有望株のマキシム・マシュノーとジャン=マルク・ドゥサンはまだ代表のレギュラーハーフには心許ない。さらに、リーグ屈指のプレースキッカーであるココットをスクラムハーフに固定できれば、信頼のおけるプレースキッカーがいないという問題も同時に解決できる上、代表監督のフィリップ・サンタンドレがここしばらく重宝しているスタンドオフのレミー・タレスはカストルでココットとハーフ団を組むチームメイト。後はフランスラグビー協会とサンタンドレの決断次第だが、ここしばらく一番手の9番が決まらずにいるフランス代表にとっては、ココットがクラブと同様のパフォーマンスを代表でも見せてくれるのならばまさに渡りに船。

 

 どこかの島国同様に「ガイジン」が代表のジャージを着ることに対して嫌悪感を示すファンも中にはいるが、「チームのためにジャージを汚せるかどうか」だけが判断基準と語るサンタンドレは意に介さない。同郷のベルナール・ル・ルーとアントニー・クラッセンはすでにコック(フランス代表のシンボル)を胸に戦っている。次のフランスのテストマッチは11月のフィジー、オーストラリア、アルゼンチンの3連戦。今やバリバリのカストル訛のフランス語を話す南アフリカ人は、28歳での初キャップをブルーのジャージで飾れるか。

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