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2014−15シーズン、トップ14チーム展望 –スタッド・トゥールーザン–

2014/08/11

 フランスチャンピオンタイトルを獲得すること最多の19回。ハイネケンカップ制覇も欧州クラブ最多の4度。クラブの年間予算はここ数年間国内トップで昨季のそれは3400万ユーロ。常に7、8人のフランス代表選手を抱える、まさにフランスラグビー界の読○ジャイアンツといったところ。たった2年間タイトルから遠ざかっただけで危機だ落ち目だと叫ばれてしまうのも、名門故の宿命か。

 

 復権を期す新シーズン、レギュラーシーズン4位、プレーオフでは準決勝に残れなかった昨シーズンの結果を受けて、トゥールーズは「抜本的なチーム方針の転換」を余儀なくされた。25年来コーチとしてチームに関わる現ヘッドコーチのギイ・ノベスは、フランスラグビー発展のためには可能な限りフランス人選手を使うべきだという考え方から育成を強化する方針をとりつつも、同時にトゥールーズの名声と豊富な資金を武器にフランス代表選手を他クラブから獲得するという、まさに某球団のようなやり方で、ここ20年で9回のブレニュス盾の獲得に4度の欧州制覇という偉業を成し遂げた。

 

 それがここ2年、フランス代表にこぞって選手を持っていかれる度にチームの戦力が大きく落ちるうえ、代表戦で怪我をした選手がシーズンの大半を棒に振ることになり、その怪我人の穴を埋めるために代表招集後の疲労が抜け切らない別の代表選手をテストマッチ直後(テストマッチの谷間の週末ということもあった)の試合で使わざるを得なくなった上にその疲労が更なる怪我を誘発するという、「フランス代表の供給源」であるが故の罠に陥る羽目になり、チームの戦力が大きく落ちることになっていた。

 

 トゥーロン、ラシンメトロ、モンペリエなどの、近年大幅に増やした予算で外国人プレーヤーを買い漁っているクラブを公然と批判していたノベスとクラブ会長であるルネ・ブスカテルだが、そんな背景から今年のメルカートではテストマッチ期間でもチームに残れる各国「元」代表を補強。ホゼア・ギアはホンダに引き抜かれるも、巨漢ウィングのニーミア・ティアラタ、ウィリアム・セルヴァの引退以来の懸案となっていたフッカーにはコーリー・フリンと、2人の元オールブラックを補強。フランス代表の30人のプレセレクションリストに名前が載っているヨアン・マエストリ、ルイ・ピカモル、ヤニック・ニャンガ、キャプテンのティエリー・デュソトワールの不在時の穴を埋めるために、元トリコロールで82キャップを数える、ロックも第3列も出来るイマノル・アリノルドキを2部に降格したビアリッツから獲得。トゥーロンでは怪我もあり外国人選手にポジュションを奪われてほとんど出番のなかったウィング、フルバックを兼ねるアレクシー・パリソンも、代表復帰とワールドカップ出場を懸けてトゥールーズにやってきた。一方で、トビー・フラッドは「現イングランド代表2番手スタンドオフ(及びセンターも出来るマルチリザーブ)」の地位と母国でのワールドカップ出場を捨てて、トゥールーズで新しい1ページを開くことを選んだ。

 

 筋肉増強剤の陽性反応が出た元南アフリカ代表フッカーチリボーイ・ラレペレに対するIRBの判断が気になるところだが、堅固なフォワード陣は相変わらず。上記の新戦力にマキシム・メダール、ヴァンサン・クレール、クレモン・ポワトルノー、ヨアン・ウジェ、フロリアン・フリッツ、ヤン・ダヴィッド、ガエル・フィクー、ジャン=マルク・ドゥサンら新旧のフランス代表とフィジー代表のティモシ・マタナブを揃えるバックスの破壊力が、フラッドという正真正銘の10番を得てやっと活かされることになれば面白い。

 

 新加入したアルノルドキは、「トゥールーズはタイトルをとるのに必要なものはすべて持っている」と新チームへの信頼を見せる。ハイネケンカップに替わり今季から始まるヨーロッパラグビーチャンピオンズカップの予選プールでは、グラスゴー、モンペリエ、バースと同プールと比較的やりやすい組に入っており、「どのチームにも可能性がある」とうそぶくノベスだが、腹の中ではしめしめと笑っているはず。トップ14では10日前のプレシーズンマッチでトゥールーズを38−12と粉砕した昨季の2冠王者トゥーロンが優勝候補だが、国内リーグと欧州カップ戦の両方を毎シーズンやりくりしないといけないのはビッグクラブの宿命。「チームの方針は変わっても、もっと良くしようとトライしながら上手くやりたいという思いは毎年変わらない」とプレシーズンキャンプ始めに語ったノベスだが、近年ややマンネリ気味なトゥールーズのラグビーに革新をもたらせるか。駒は揃った。タイトルをその手に取り返すことが出来るのか。現フランス代表監督フィリップ・サンタンドレの就任前には、フランスラグビー教会から真っ先に届いた代表監督就任依頼を断った名将の采配が注目される。

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