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2014−15シーズン、トップ14チーム展望 –ASM クレルモン・オーベルニュ–

2014/08/12

 8シーズンの長きにわたって指揮を執ったヴァーン・コッターが、スコットランド代表監督のオファーを受けて昨シーズン限りで去ることになったクレルモン。このシーズンオフは常に長期的視野でチーム作りをするクラブらしくなくかなりの選手、スタッフの入れ替えが行われることになったが、タイトルを狙うチームに相応しい補強になった。

 

 コッターに替わってヘッドコーチを務めるのは、2010年よりアシスタントコーチとしてコッターの下で働いてきたフランク・アゼマ。クレルモンのラグビーを一番知っている男がそのままチームを率いることになり、チーム作りの継続性に不安はない。その一方で、フォワードコーチとしてジョノ・ギブスをアイルランドのレンスターから招聘。元オールブラックのバックローは、2008年に31歳でレンスターのフォワードコーチに就任すると、その若さにもかかわらずヨーロッパ最高のバックスラインが売り物だったレンスターのフォワードを、同じアイルランドのマンスターの強力フォワードに対抗できるまでに強化。昨季までの6シーズンで、3度のハイネケンカップ獲得、2度のPro12優勝、欧州チャレンジカップを1つとレンスターの黄金時代に大きく貢献。将来を嘱望されるコーチの1人である。

 

 ネイサン・ハインズ、ライアン・キング、シチベニ・シビバツ、ジェラール・ヴォスローらチームの核を担っていた選手を年齢もあって放出し、これからが旬の7選手を獲得。18歳でウェールズ代表デビューを飾り25歳の現在まで40キャップを数えるセンターのジョナサン・デイヴィスが、ウェスレー・フォファナと組むセンターラインは他クラブの垂涎の的。リー・バーンが抜けたフルバックには、バースのマスコット的存在だったニック・アベンダノンを獲得。金髪をなびかせて走るアタック時のその閃きとスピードは超一級品。クレルモンのアタッキングラグビーにはぴったりの素材となるかもしれない。ウィングには、シビバツの代わりに同じく元オールブラックのザック・ギルフォードを連れてくるという賭けに出た。アルコール依存症の治療を2013年に受け、復活を目指した昨季はNPCで12試合に出場。ニュージーランド代表からもクルセイダーズからも見放された男はまだ25歳。今度は黄色のジャージで昔の輝きを取り戻せるか、チームのバックアップも欠かせない。また、2部に降格したペルピニャンからスタンドオフのカミーユ・ロペスと、2メートルを超す巨人ロックセバスチャン・ヴァアアマイナという2人の若いフランス代表を獲得。右膝十字靭帯断絶からの復帰を目指すロペスは先週末のプレシーズンマッチでいいプレーを見せており、昨シーズンはチーム首脳陣との確執もありペルピニャンでほとんど「消えて」いたヴァアアマイナも代表復帰を目指してのシーズンとなる。昨シーズン、レンタルされていたリヨンでチーム最多出場を誇ったグルジア代表ヴィクトール・コレリシュヴィリには、ヴォスローの後釜にとのクラブの大きな期待がかかる。控えのフッカーには2部のブール=ガン=ブレスからブランビーズ、ワラタスでもプレーしたジョン・ウルジアを引っ張ってきて、長いシーズンを見越してのバックアップにも抜かりはない。

 

 キャプテンマークはオーレリアン・ルジュリーからナンバーエイトのダミアン・シュリが引き継ぐも、トマ・ドミンゴ、ジュリアン・ピエール、ジェイミー・クドモア、ジュリアン・ボネール、モルガン・パラ、ブロック・ジェームズら2010年のトップ14優勝時のメンバーは相変わらず健在。コッター時代のプレーの更なる改良と新加入選手の融合がテーマとなった3週間に渡ったプレシーズン合宿では、合宿地到着前夜にルジュリー、ピエール、バンジャマン・カイザーがギャングの集団に刀や鉈で襲われ負傷するというショッキングな事件もあったが、「もう過ぎたこと」とアゼマはチームが今週末に迫ったトップ14の開幕に集中していることを強調。テクニカルディレクターのジャン=マルク・レルメは、「プレシーズンは短過ぎたよ。変えることがたくさんあったからあと何週間か必要だった。先週よりはいいけど、今はまだチームを作り上げているところ。もう少し時間がかかるよ」と焦る様子はない。

 

 レギュラーシーズンでは3位に終わった昨季、ハイネケンカップでは準決勝でサラセンズに大敗し、そのショックから立ち直れずに迎えたトップ14プレーオフではホームのマルセル・ミシュランでカストルに敗れ、4年半に渡って続けてきたホームでの連勝記録も77で途絶えることになった。心機一転となる新シーズンの目標は、当然クラブの新しいページをタイトルで彩ることとなる。

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