top of page

2014−15シーズン トップ14チーム展望 –ラシンメトロ 92–

2014/08/15

 「どこに目標を置くかクラブ全体で話し合うことになるはず。我々スタッフと選手、そして会長との間での話し合いになるわけだけど、トップ14にしても欧州カップ(ヨーロッパラグビーチャンピオンズカップ)にしても、目標は両方とも出来る限り遠くまで行くことさ」。プレシーズンの開始に合わせてフォワードコーチのローラン・トラヴェールは今季のラシンメトロの目標をそう語った。

 

 2006年に不動産王のジャッキー・ロレンゼッティが2部で燻っていた名門の会長に就任して以来、クラブは毎年のように大型補強を行い、2009年にはトップ14に昇格。昇格初年度からレギュラーシーズン6位という快挙を見せると、以降昨季まで5シーズン連続でプレーオフに進出し、完全にトップ14の強豪の名を取り戻した。それでも行き当たりばったり的な毎年の補強でなかなかチームが安定せず、トップクラスの選手を集めながらもタイトルに手が届かない状況を見かねたロレンゼッティは、地方の中堅チームだったカストルを5年間かけてトップ14優勝まで導いたローラン・ラビットとローラン・トラヴェールのコンビを昨シーズンオフに新コーチとして招聘。さらに、ダン・リディエイト、ジェイミー・ロバーツのウェールズ代表に加え、アイルランド代表スタンドオフのジョナサン・セクストンの獲得にも成功。引退したばかりの同じ元アイルランド代表の名スタンドオフ、ローナン・オガーラもキッキングコーチとセクストンのお守りを兼ねて呼び寄せた。

 

 新体制1年目となった昨シーズンは、ハイネケンカップでは予選プールで敗退。トップ14はレギュラーシーズン5位ながらプレーオフ初戦でトゥールーズを破る金星を挙げるも、準決勝で優勝したトゥーロンにはじき返されることになりタイトルには手が届かなかったものの、時間が足りなかったのは明らか。今シーズンは、「今は、新しいスタッフになってから1年が経っている。選手の入れ替わりも去年より少なかったし、外国人選手もチームに馴染んでいる。選手もチームのシステムをさらに消化吸収してきているのが練習を見ていてわかるよ」とバックス担当のローラン・ラビットが言うように、チームとしての完成度は去年よりも高い。昨シーズンはディフェンスシステムの整備が最優先課題だったが、選手の理解が浸透している今年はいよいよアタックの強化に着手。ラビット、トラヴェールのコンビの手腕が見物となる。

 

 一方で、恒例の豪華補強もしっかり敢行。2人が率いていたカストルからアントニー・クラッセンとブリス・デュランの2人のフランス代表を獲得。特に、母国アルゼンチンに戻ってプレーすることを選んだ「エル・マゴ(魔法使い)」ことフアン・マルティン・エルナンデスの後を受けてフルバックを務めることになる、24歳ながらフランス代表の15番を背負うデュランにかかる期待は大きい。また、マンスターからはセンターのケイシー・ラウララ、チータスからは将来のスプリングボクスを担うと見られている逸材ヨハン・フーセン、ペルピニャンからはウェールズ代表ロックのルーク・チャータリスが加入。降格したビアリッツから呼び寄せたテディ・トマは、驚異的な身体能力と爆発力を持つ、フランス期待の20歳のウイング。つきまとう怪我から解放されれば、マルク・アンドリュー、フアン・イモフ、アドリアン・プランテと代表級が並ぶラシンのウイングの中で、センセーションを巻き起こすことになるかもしれない。

 

 昨シーズン後半を足首の怪我で棒に振ったキャプテンのディミトリ・ザルゼウスキーはトラヴェールの言葉を繰り返す。「チームの目標は、国内リーグとヨーロッパのカップ戦両方で、行けるところまで行くこと。限界は決めちゃいない」。ヨーロッパラグビーチャンピオンズカップのプールでは、トレヴィーゾ、ノーサンプトン、オスプレイズと願ってもない組に入っており、8強進出は最低ライン。トップ14では昨季の準決勝以上を目指すことになる。「毎年プレッシャーはあるよ。おれたちはラシンに来ることに決めた、選手も同じ。プレッシャーがあるのは当然さ。だからこの仕事が好きなんだ。じゃなかったら飽きてしまう。だからラシンが常にメディアの注目を集めるように願ってるよ」とシーズン開幕を前に話すトラヴェールの言葉には、去年よりもいいチームが出来た自信が垣間見える。

Please reload

Copyright (c) kosuke hakoyama. All rights reserved.
本サイト内の記述、画像、写真の無断転載・転用を禁止します。

bottom of page