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2014−15シーズン トップ14チーム展望 –ラグビークラブトゥロネ–

2014/08/16

 世界中からスターを集め、「ラグビー界の銀河系」と揶揄されるトゥーロン。今年も他クラブの嫉妬と中傷を集めつつ予想通りの豪華補強。ざっと挙げても、グルジア代表76キャップ、トップ14の暴れん坊マムカ・ゴルゴゼ。もう一人の暴れん坊ジュラール・ヴォスローをライバルのクレルモンから。降格したペルピニャンからはフランス代表23キャップのフッカーギレム・ギラドと代表復帰を目指す23歳の2メートルロック、ロマン・タオフィフェヌア。懸案だった左プロップにはアレクサンドル・メニーニとファビアン・バルチェラの新旧フランス代表。駒が揃っているはずのスクラムハームにも、各年代表を経験している21歳のエリック・エスカンドをなぜか補強。とどめは、ジョニー・ウィルキンソンの後釜としてキッカーを務めることになるウェールズ代表のフルバックリー・ハーフペニーに、ワラビーズ復帰とワールドカップ出場を諦めていない「元神童」ジョームズ・オコナー。

 

 上記の新戦力に加えて、「数年後にはトゥーロンの育成出身の選手で優勝を」と話す会長のムラッド・ブジェラルは、エスカンドを含めて7名のユース年代の選手と契約。その外国人戦略で「フランスラグビーを殺す」と批判を受ける中、育成にも力を入れている素振りを見せた(いや、15歳以下のカテゴリーでは昨シーズンのフランスチャンピオンだし実際トゥーロンの育成はいいのだけれど、トップチームの層が厚過ぎてガエル・フィクーやピエリック・グンターのようなフル代表にも呼ばれた若手ですら十分な出場時間が得られず移籍してしまうという「銀河系」故のブラックホールの影響が)。

 

 ブライアン・ハバナ、マット・ギタウ、ドリュー・ミッチェル、カール・ヘイマン、マルティン・カストロジョヴァンニ、バキース・ボタ、アリ・ウィリアムズ、フアン・マルティン・フェルナンデス・ロベ、クリス・マソエ、フレデリック・ミシャラク、マチュー・バスタロ、マキシム・メルモーズといった星々は健在。ジョニー・ウィルキンソン、ジョー・ヴァン・ニカーク、ダニー・ルッソウらが引退して迎えた新シーズンも相変わらずの銀河系っぷり。他チームだったら控えに回ることなど考えられない選手もベンチを温めることになり、トッププレーヤー特有のエゴがチームの歯車を狂わしかねないところを、チームの勝利至上主義を貫く総監督のベルナール・ラポルトの冷徹とも言えるフェアな選手起用と各選手のプロ意識の高さで、6年前まで2部にいたクラブはここ3シーズンで6回の決勝(欧州チャレンジカップにハイネケンカップ2回。トップ14決勝が3回)で3つのタイトル獲得というヨーロッパナンバーワンクラブに成り上がった。

 

 昨日のシーズン開幕ゲームでは、アウェーで降格候補の1つと見られているバイヨンヌ相手にハーフタイムまで12−12と手こずるも、試合を通して圧倒的に陣地もボールも支配。後半に2トライを決めて29−15で勝利し、歴史的な2冠の後でもチームはモチベーションを失っていないところを見せた。

 

 今のところ唯一の心配は、チームのキャプテンでありシンボルでもあったウィルキンソンの引退。キャプテンマークは元オールブラックで世界最高の右プロップであるカール・ヘイマンが引き継いだが、10番の後継者はフレデリック・ミシャラクにマット・ギタウ。昨日の試合では74分に入ったジェームズ・オコナーもスタンドオフでプレーしたが、3人ともウィルキンソン以上のファンタジーに溢れるも、安定性に欠け軽いプレーでポカも少なくなく、重要な試合での信頼性に欠ける。何より、ここぞという試合でのウィルキンソンの存在感は別格だった。「ジョニー依存症」とまで言われるチームが独り立ちできない限り、「2冠の連覇」は望めない。

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