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2014−15シーズン トップ14チーム展望 –アヴィロン・バイヨネ–

2014/08/18

 1999年から2001年にかけては元日本代表スクラムハーフの村田亙が在籍したことでも知られるバスクの名門バイヨンヌだが、ここ5年間で、コーチングスタッフが替わること6回、会長の椅子も落ち着かず現会長のマニュ・メランは4人目と、完全にクラブは迷走状態。2009年以降のレギュラーシーズンの成績も、先行きの見えないクラブ運営を象徴するかのように、13位(自動降格対象ながら、12位のモントーバンが財政難で降格となり、降格を免れる)、7位、12位、8位、10位と毎年のように下位に低迷。

 

 昨シーズン中もいろいろあった。シーズン序盤にチームを引っ張るはずの助っ人組、マイク・フィリップス、ドウェイン・ハール、スティーブン・ブレットが酩酊状態でビデオミーティングに登場しチームの顰蹙を買い、再犯となったフィリップは首に。同じバスクのライバル、ビアリッツと共に降格圏をさまよった挙げ句、降格を恐れる両チーム関係者から最大のライバル同士の合併計画が選手の知らないところで急遽持ち上がり、地方の名門クラブが次々に財政破綻をきたすという国内ラグビーの現状もありフランスラグビー界全体を巻き込んだ大論争に発展するも、両クラブの首脳陣の名門が故のエゴがまとまらずあっけなく頓挫。ビアリッツはProD2に降格となり、フランス一熱いバスクダービーは消滅した。また2011年より会長を務め、近年チームの最大のスポンサーでもあった眼鏡成金のアラン・アフルルーが、クラブの閉鎖的な性質と派閥闘争にいい加減嫌気が差して会長職を辞職。スポンサーとしては残るものの、メインスポンサーを失ったバイヨンヌは、新シーズンに向けて他クラブが昨年以上の予算を計上する中唯一クラブ予算の削減を強いられ、新しいメインスポンサーが見つからないまま今シーズンの開幕戦を胸スポンサーなしのジャージで迎えることになった。

 

 そんな状況からクラブはシーズンオフに選手を大量放出。 ジョー・ロコソコ、マーク・チゾム、ドゥワルド・セネカル、マーヴィン・オコナー、ドウェイン・ハールら重鎮は残ったが、今シーズンは育成出身の若手中心の方針に舵を切ることを余儀なくされ、10人近くをトップチームに昇格。新コーチにはプーマスとワラビーズで共に20キャップ以上を数えたパトリシオ・ノリエガをフォワードコーチに迎え、昨シーズンまでユース監督を務めたニコラ・モルラエスをバックスコーチとして昇格。モルラエスは昨季、トップチームに昇格するマチュー・ウガルド、シャルル・オリヴォン、クリストフ・ルスタロ、バスティアン・デュアルド、アントニー・エトゥリヤールらを擁してユース年代で準優勝を飾っており、選手を熟知し信頼も厚い。

 

 自身もアジャンで若くして育成からトップチームに昇格して、長く「オラがクラブ」でプレーしたフランカーのジャン・モンリボは、そんな若手を優しい目で見つめる。「おれもアジャンで経験した。あいつらは小さい頃からアヴィロンを応援しにスタジアムに来ている。いつも選手のプレーを観に来ていたのが、ある日突然自分がグラウンドに立っていて、それを他の仲間が見ることになる。美しいよ。あいつらにはそれを感じるんだ。魔法のような瞬間さ。本当にクラブに対する愛がある。まだ子供の時にクラブで教わった、今日では少しずつ失われつつある価値観を感じられる。それを味わえるのは最高だよ。育成からトップチームに上がってプレーするのは、当然何か特別なものがある。自分が愛するクラブなんだ。選手は憑かれたようにプレーするよ。クラブ愛と一緒にくるこの「何か」があるのをひしひしと感じるよ」。

 

 開幕戦ではトゥーロン相手にホームで15−29と敗れたが、前半は2冠王者相手に12−12と善戦。またナンバーエイトでスタメン出場した22歳のシャルル・オリヴォンは各国代表、元代表が集まるトゥーロン相手に出色のゲームを見せ、近いうちのフランス代表招集も期待される。一方で後半はヨーロッパチャンピオンの圧力に屈し、ガブリエル・ロヴォバラブ、マルティン・ブストス・モヤノ、ジャン・モンリボを怪我で失うという厳しい船出。会長のメランは6月に、「今シーズンは最終日を待たずに残留を決めたい」と強気とはいえないコメントを残していたが、トゥーロン戦でもフル出場した21歳のウガルドは、「自分たちが若いチームだっていうのはわかってる。期待されてもいないし、みんなバイヨンヌは下位候補だと見てる。だから、怖さよりも、おれたちだってやれるんだというのを見せたい思いの方が強いよ」とシーズンへの期待を口にする。現実には残留が目標となるバイヨンヌ。チームの運命は生え抜き選手がクラブ愛で魔法を起こせるかに懸かっている。

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