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オコナーが去って、ウィルキンソンが戻ってくる?

2014/08/30

 ひと月半前にトップ14の新シーズンの見物の1人として、鳴り物入りでトゥーロンに加わった元オーストラリア代表ジェームズ・オコナーが、2月から始まるスーパーラグビーの新シーズンに合わせてクイーンズランドレッズに加入することがトゥーロンとレッズの両サイドから公式に発表された(レッズ側は2年契約と発表しているが、トゥーロン側は「ワールドカップ後には戻ってくる」と主張)。

 

 元々来年のワールドカップに向けてワラビーズへの復帰を諦めていなかったオコナー。代表監督であるユアン・マッケンジーも「扉は開いている」と以前から言い続けており、あとは代表復帰の前提となる「国内リーグでプレー」するために、受け入れ先クラブを見つけるだけとなっていた。1週間前には決断を下すのはまだ1ヶ月ほど先と語っていたオコナーだが、先週末のフォーネイションズのニュージーランド戦で、オコナーと同じく複数のポジションをこなせるユーティリティーバックのパット・マッケイブが自身3度目となる頸椎の骨折を負い選手生命にピリオドを打たざるをえなくなったことを受けて、マッケンジーから代表復帰の確約と国内復帰を求める電話が入ったらしい。

 

 トゥーロン側にとっては大きな痛手のようにも見えるが、実はこの展開はオコナーの加入以前より囁かれていたシナリオ通り。ヘッドコーチのベルナール・ラポルトにも会長のムラッド・ブジェラルにも慌てる様子はない。それでもオコナーの穴を埋めるために新しい選手を探してこなければならない。チームでのオコナーの位置付けは完全なユーティリティーバックで、フレデリック・ミシャラク、マット・ギトー(もう完全にトップ14にとけ込んだマットなので、こっちの発音で書かせてもらいます)を補佐する形での3番目のスタンドオフ。トゥーロンは昨シーズンもウィルキンソン、ギトー、ミシャラクと3枚のスタンドオフでシーズンを戦っており、ユーティリティーバックにしろスペシャリストにしろ、とにかくスタンドオフが出来る選手を連れてくることになる。おまけにギトー、ミシャラクとも近年はスタンドオフとしてフルシーズンを戦っておらず、共に「軽い」タイプのファンタジー溢れるプレースタイルで大ポカも時に見受けられ、欧州カップとトップ14の2冠の2連覇という偉業を目指すシーズンにはいまいち心許ないことを考えると、本物の10番が欲しいところ。

 

 フランスではすでにシーズンが開幕し2週間が過ぎ、プレミアシップとプロ12も開幕を来週末に控えており、市場に残っているプレーヤーはいわゆる売れ残り。となると選択肢は限られ、育成から若手を引き上げるか、 他チームですでに戦力外の烙印を押された選手を引き抜くか、南半球から一線級を呼び寄せるか。そんな状況で、オコナーレンタル(退団?)を発表した折に補強選手について訊かれたブジェラルの返事は、「その選手はおれたちからそんなに遠くないところにいるかもしれない…」。この思わせぶりなコメントが、トゥーロンサポーターの間に燻っていた切望にも近い「ジョニー現役復帰」の噂に再び火をつけた。

 

 今シーズンは月に一度1週間トゥーロンに滞在する形でスキル担当コーチを務めているジョニーだが、昨シーズン終了後にブジェラルは「どっちにしてもクラブとしてはジョニーのライセンスは来年も継続する」と言っており、実は今でも選手として登録されておりいつでもプレーできる状況にある。一昨年のシーズンには、トゥールーズで引退初年度からコーチに就任していたウィリアム・セルヴァットが、怪我人の続出でフッカーがいなくなるというチームの緊急事態を受けシーズン半ばで現役復帰をしており、特に珍しいことでもない。ジョニー自身も、相変わらずの「ビョーキ」は治らないらしく、現在もトゥーロン滞在時は現役時代と同じトレーニングをこなした上でコーチとして選手とともに汗を流しており、現役時代と変わらないコンディションを維持。ブジェラルの言葉を聞くと、サポーターがジョニーの復帰を夢見たくなるのも無理はない。

 

 それでも、メディアを賑わせるのが好きな会長の言葉を鵜呑みにするほどサポーターもナイーブではないし、ジョニーは引退の決断に満足していると語っており、そもそも一度決めた引退を撤回するというのはジョニーらしくない。メディアでも早速、アルゼンチン代表のユーティリティーバックフアン・マルティン・エルナンデスの獲得にトゥーロンが動いているという情報が流れ、今のところ先行きは不透明。オコナーがチームを離れるのは1月。今しばらくトゥーロンサポーターの夢見る日々は続く。

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