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ジョニー・ウィルキンソン、トゥーロンからの現役復帰要請を断る(とりあえず今のところ)

2014/09/17

 「トゥーロンを愛している。クラブには忠誠を尽くすよ。でも今日戻ってくるのは理性的じゃない」

 

 ジェームズ・オコナーのクイーンズランドレッズ復帰が決まり、穴埋めをする選手を探していたトゥーロン。メディアでは、現在アルゼンチン代表としてラグビーチャンピオンズシップを戦っているフアン・マルティン・エルナンデスとの6ヶ月間の契約が決まったと報じられていたが、クラブからの公式発表はないままだった。

 

 そんな状況で、トゥーロンは13日土曜日のナイトゲームで、ホームのマイヨールで4人のキッカーが合わせて6つのペナルティゴールと1つのコンバージョンを外したのが響いてスタッド・フランセに24−28で敗れ、その上スタンドオフのフレデリック・ミシャラクが脱臼癖の完治のために昨年7月に手術した肩を再度負傷。ミシャラクに替わりスタンドオフに入ったオコナーは、判断ミスを連発し、ゴール正面40mのペナルティゴールも外すなど、スタンドオフとしては準備ができていないことを露呈。プレースキッカーの不在以上に、コンサートマスターを失ってゲームをまったくコントロールできないチームを見て、トゥーロンサポーターの口からは再び「ジョニー」の名前が漏れることになった。

 

 翌朝9時、日曜日にもかかわらず監督のベルナール・ラポルトはビデオミーティングの為に選手を緊急招集。それに先立って、会長のムラッド・ブジェラルはラポルトの立ち会いの下、ウィルキンソンの代理人に電話をし、「お前にかかっている。おれたちにはジョニーが必要だ。説得するのはお前だ」と、2冠を置き土産に6月に引退したクラブのレジェンドの現役復帰を要請。ミーティングの後には、現役時代にウィルキンソンとハーフ団を組んだ現トゥーロンバックスコーチのピエール・ミニョーニが直接ジョニーに電話をかけたのだったが、その電話口での返事が上記の言葉だった。

 

 ハイネケンカップを2連覇し、念願だったトップ14も制し、2冠というこれ以上ない形でラストシーンを飾ったウィルキンソンには、今更シナリオを書き替える理由はない。またエージェントによれば、 スパイクを脱いでからは現役時代に常に苛まされていたプレッシャーからも解放され、リラックスして新しい生活を楽しんでおり、「ジョニーは戻ってこない」。そして一番の理由は、今自分が復帰してプレーするのは、マット・ギトー、ミシャラク、オコナーや、キッカーを務める選手に対してフェアじゃない、そのプライドを傷つけるという思いから。イングランド時代は度重なる怪我で、何度も代表10番失格の烙印を押されたウィルキンソン、押し出される選手の気持ちはわかっている。特に、昨シーズン最終盤ウィルキンソンの存在のためベンチにも入れなかったミシャラクにとっては、今シーズンはワールドカップに行くためにどうしてもクラブでプレーする必要があり、ウィルキンソンが戻ってくればそのチャンスを妨げることになりかねない。ミニョーニに伝えた言葉の真意はそこにある。

 

 ミシャラクの怪我を受けてクラブは日曜の朝にやっとエルナンデスとの契約を正式に発表。ただし、エルナンデスはオコナーの代わりであり、「1月までは来ない」。エージェントとジョニーの言葉を受けて翌月曜日にはブジェラルも、「ウィルコの復帰?無理だと思うよ、とりあえず今のところは。ウィルキンソンが戻ってくる可能性は、ヴァンサン・モスカート(現在ラジオのコメンテーターを務める元仏代表。49歳)がグラウンドに戻ってくる可能性と同じくらいのもんだよ。冗談だけど。でも、ウィルキンソンが戻ってくるためには、本当にチームが危機に瀕するか、10番がひとりもいない状況にならないといけない」とラジオで語り、ウィルキンソンにプレッシャーを与えることを避けるべく事態の沈静化を図った。

 

 一方でウィルキンソンに代わるキッカーとして今季加入したものの肩のリハビリと内転筋の怪我でいまだ一度もプレーできずにいるリー・ハーフペニーに関して、ブジェラルは内転筋の怪我を隠してトゥーロンと契約した疑いを指摘。契約破棄の可能性にも言及したため、ハーフペニーのエージェントが、話し合いを持つべく今日急遽トゥーロン入り。ハーフペニー側からトゥーロンに残る意志を示す公式声明が出されたが、ウェールズではすでにカーディフ・ブルーズとオスプレイズが獲得に興味をしており、万が一ハーフペニーがトゥーロンを離れるようなことになれば、ウィルキンソンの復帰が一気に現実味を帯びることになる。

 

 「昨日練習でジョニーに会ったよ、他の全員同様に。チーム全体をコーチしてくれた(月に1度、1週間トゥーロンに留まりスキルコーチを務めている)。でも、復帰については訊かなかった。彼の問題だから。おれの方から何か言うことは出来ない。ジョニーは今第2の人生を生きている。彼自身が自分で考えることだ。ジョニーはチームメイトとグラウンドにいる時はすべてを捧げるし、あんまりにも驚かされることが多いから... おれにはわからないよ。ジョニーはこのクラブを心底愛している。フレッド(ミシャラク)の怪我が深刻でなければいい。でも、もしチームがどうにもならない状況に陥って、ベルナールが頼んだら、ジョニーは『うん』と言うと思う。でも、彼の代わりにおれが答えるわけにはいかない」と、フォワードコーチのジャック・デルマスは昨日のクラブの定期会見で質問に答えた。

 

 トゥーロンサポーターが夢見る奇跡のカムバックは見られるのか。現時点では「ノー」だが、ミシャラクの怪我の具合を見極めるまで、夢見る日々は続く。

 

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