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Egg Chaser 2. ジェイミー・ロバーツ –ウェールズのナイスガイ–

2015/04/09

 「こぶ」やら「クアグマイア(アメリカのアニメ『ファミリー・ガイ』に登場するキャラクター。グーグルしてもらえれば、どんな面構えか見ていただけます)」やら、そのエラの張った顎と1メートル93センチ、110キロの厳つい体つきでついたあまりありがたくないあだ名も今は昔。ラシンメトロのウェールズ代表センター、ジェイミー・ロバーツの今の愛称は「ドク」。

 

「チームメイトの間では、しばらく前からおれのニックネームは『ドク』だったんだけど、いつもちょっとペテン師のような気分だった。やっと自分で医者だって言えるようになってよかったよ」

 

 その外見とは裏腹に自らを「理系オタク」と称し、「たとえ両方こなすのが難しくても、二足のわらじを履いて努力するのが好きなんだ」と語るドクター・ロバーツ。普通なら5年のカーディフ大学医学部の過程を、ラグビーのプロ選手としての活動をこなしつつ、8年かけて2013年春に無事終了。その夏に移籍したラシンメトロでは、自身がスタンド観戦だった試合で、頭を切ったチームメイトのアンリ・シャバンシーの傷口を縫合するという、正真正銘の二刀流。元代表で引退後に医者をやっているラグビー選手は何人かいるし、プレイングマネジャーも見たことあるが、選手兼チームドクターというのは初めて見た。

 

 カーディフとウェールズ代表でのプレーを続けつつ、医師免許まで取得するというスーパーマンぶりに加え、気さくでさわやかなナイスガイということでウェールズでは大の人気者。また、本人のツイッターではしばしば両親も登場し、その親孝行ぶりもますますナイスガイ度を高めている。ちなみにどうでもいいが、1歳年上の兄は主にスポーツの試合を専門とするフリーランスのテレビカメラマンで、ミレニアムスタジアムでのウェールズ代表戦では、弟はラインの内側でボールを手に、兄はピッチ際でカメラを手に、異業種で兄弟同じグラウンドで共に「プレー」したりすることも。また、医学部行ってプロラグビー選手やってるだけでも十分忙しいだろうに、大の音楽ファンということでチャンスがあれば各地のコンサートに出没しステップを踏み身体を揺らし、2013年から住むパリでは「おれはまだ若いし独身だから」と都会生活を楽しむ。ガリ勉とはほど遠い、嫉妬したくなるのにそれすらできない、スポーツ万能で成績優秀な学級委員長のような男である。

 

 最近は、ウォーレン・ガトランドのウェールズ代表でも、一昨年に移籍したフランストップ14のラシンメトロでも、チームのスタイルもありそのパワーを活かしてのクラッシャー役としてのイメージがついてしまっているが、代表デビュー時にはウイング、フルバックでプレーしていたように、実は正確な状況判断と緻密なコース取りで抜くこともできるタイプなので、もう少し、以前見られたそういうプレーも見たいと思っているのは僕だけか。

 

 代表では、ここ数年不動の12番。28歳の今までに数えたキャップは69。本人は、「ラグビーはいつ終わりになるかわからない。怪我がつきものだから」と言うが、世界最高のセンターのひとりであり、またまだキャップ数は伸びるはず。ちなみにその後は、「引退したら、しばらく旅して、その後は多分、整形外科医としてウェールズ選手の手術をしているよ。いつまでもウェールズラグビーのために尽くすつもりさ」。

 

 ダン・カーターの獲得でサラリー総額を減らさなければならないラシンメトロの事情もあり、1シーズン契約を残してパリを離れることが決まったロバーツ。ここ数日、元所属先のカーディフに戻るのか、プレミアシップのロンドンのクラブに行くのかと、毎日のように来季の移籍先が話題になっているが、噂によると、ワールドカップの後、オックスフォードかケンブリッジで短期過程を取って、12月10日トゥイッケナムで行われる伝統のヴァーシティーマッチに出ることも狙っているらしい。

 

 学級委員長のわらじは、二足でも足りそうもない。

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