top of page

Egg Chaser 3. ディラン・ハートリー –キャリア通算50週間出場停止のイングランドの問題児−

2015/04/14

 2007年4月、ワスプス戦でジェームス・ハスケルとジョニー・オコナーの目を突いたとして26週間の出場停止。2012年3月、シックスネイションズのアイルランド戦でスティーブン・フェリスを噛んで8週間の出場停止。2012年12月、ハイネケンカップの試合でアルスターのロリー・ベストを殴り2週間の出場停止。2013年5月、プレミアシッププレーオフの決勝でレフェリーのウェイン・バーンズに「クソ詐欺師」と暴言を吐き前半終了を待たずにその場で退場、11週間の出場停止(試合も負けて当然優勝を逃した戦犯に)。2014年12月、レスターのマット・スミスの鼻に肘打ちをお見舞いし3週間の出場停止。

 

 以上が、ノーサンプトンのイングランド代表フッカーディラン・ハートリーの前科。ここまでキャリア通算で50週間の出場停止を受けたことになり、9年間のプロ生活でほぼ1年間分出ていなかったことになるというのはかなりのもの。そしてまだ現役バリバリで、記録は継続中の可能性が大。しかも、昨年末のエルボーに関しては、直後に迫っていたシックスネイションズまで出場停止が響かないようにと、イングランドラグビー協会からプレミアシップに見えない圧力がかかって処分が軽めだった印象は拭えないし。

 

 喧嘩好きというよりも、頭に血が上るとついプッツンしてしまうというタイプで、2007年に最初の出場停止を受けた時には、イングランドのスポーツ精神医学の権威であり精神科医として現在はサッカーのイングランド代表チームのスタッフを務めるスティーブ・ピーターズのサポートを受けたにもかかわらず、どうやら完治しなかったようで(ま、こういうのって、そんな簡単に治れば苦労はしない)、バーンズさんに「Fucking cheat !!」とつい言ってしまったのはともかくとして、パンチやらエルボーやら以外にも、出場停止まではいかないまでもかなり汚いプレーをついやらかしてしまうクセがどうしても治らない。

 

 それでも、ニュージーランド生まれの問題児は、ここまでイングランド代表で66キャップを獲得しプレーヤーとしての資質には疑いの余地はなく、2009年からは強豪ノーサンプトンでキャプテンも任され、昨シーズンには前年のリベンジを果たし、ノーサンプトンを悲願のプレミアシップ初優勝に導いている。昨年12月には、フランストップ14のモンペリエから高額オファーを受けながらも、ノーサンプトンと3年間の契約延長。「どのスポーツにおいても、キャリアをたった一つのクラブで終える選手に大きな敬意の念を抱いている。もしセインツをおれの唯一のプロクラブとして選手生活を終えることができたら、本当に誇りに思う」と男気を見せ、フランクリンズガーデンズのサポーターを小躍りさせた。

 

 となると、やっぱりあとはそのキレ癖を治すだけ。昨年末のエルボー事件の直後には、イングランド代表監督スチュアート・ランカスターから最後通牒を告げられ、本人も「何度もチャンスをもらえるとは思っていない。これがラストチャンスなのはわかっている」と、9月に迫っているイングランド開催のワールドカップに向けて今度こその変わり身を期して、再度精神科医のお世話になることに。

 

 ところがどっこい、1月の出場停止明け2試合目のゲームで、不必要な反則で早速シンビンを頂戴。これで柄にもなく萎縮したのか、シックスネイションズではカードをもらうようなラフプレーも暴言もなく乗り切ったものの、持ち前だったいい意味での激しさも失われ、以前ほど目立たなかった。

 

 気性が悪くて去勢した馬が、競争能力も一緒に失ってしまっては元も子もない。イングランドのフッカーの中では、ハートリーとトム・ヤングスの実力が頭一つ抜けていて、怪我さえなければ二人の代表選出は決定的。ワールドカップまでに、ビョーキを出さずにベストのプレーをする術を学んでくれることを祈るのみである。

Please reload

Copyright (c) kosuke hakoyama. All rights reserved.
本サイト内の記述、画像、写真の無断転載・転用を禁止します。

bottom of page