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シックス・ネイションズ(Six Nations、6カ国対抗)

 イングランド、スコットランド、フランス、ウェールズ、アイルランド、イタリアの間で争われる、その年の欧州チャンピオンを決めるヨーロッパラグビー界の毎年の冬の風物詩。1999年まではファイブ・ネイションズの名で親しまれていたものが、2000年のイタリアの加入で参加国は6カ国に。1882年より始まったイギリス、スコットランド、ウェールズ、アイルランドで行われていたフォー・ネイションズ、またはホーム・ネイションズと呼ばれていた対抗戦に、1910年にフランスが加わり、2000年のイタリアの参入を経て現在の形となる。

 

  開催方式は同一カードが1試合のみ行われる総当たり戦で、ホームとアウェイは隔年で各国間を入れ替わる。大会の勝者は1年間欧州チャンピオンの名を保持し、全勝優勝は「グランドスラム」と呼ばれ、逆に全敗のチームには「木の匙」の名が贈られる。この「木の匙(wooden spoon)」なるものは、元々はケンブリッジ大の数学科の卒業試験で合格者の中で最低の点を取った者に木製のスプーンが贈られていたのが起源。どのような形でラグビーにおいて使われるようになったかははっきりしないが、フォー・ネイションズとして行われていた時代にはイギリス代表として多くのケンブリッジ卒業生がプレーしており、それが影響しているという説もあれば、1884年の大会において、イングランド代表であったウィリアム・ボルトンなる学生が、全敗を喫したアイルランド代表に、自らが休暇で赴いたドイツのグラウビュンデン州で買ってきた、スイスのチーズ職人が使う巨大な木製の匙を贈ったのが始まりとも言われている。基本的には単純に最下位チームに贈られる「賞」であったが、今では特に全敗を喫したチームに対して使われる。 2013年終了時点で最多の木の匙の不名誉を受けたのは16度のアイルランド。スコットランドが14度で続く。ただ、参加回数に対する割合では、9回の参加で4度の全敗と、60パーセントを超えるイタリアが圧倒的。ちなみに、最多優勝を誇るのは37度のウェールズで、イングランドが36回で続く。グランドスラムは11度のウェールズを、12度のイングランドが上回る。

 

 今日では、ヨーロッパにおける冬の一大スポーツイベントであり、毎年各国のサポーターが自国のチームを応援すべくヨーロッパ中を移動する。ホイッスルの数時間前にはスタジアム周辺に両チームのサポーターが集まり始め、ビールを片手にそれぞれのチームソングを歌い、ノーサイドの笛の後は、再びパブに繰り出し、時には拙い言葉ながらも両国のサポーターが混じって笑顔で健闘を称え合う姿は壮観であり、爽快。フランスでは、トロワジエム・ミッタン(troisième mi-temps。英語では、ファースト・ハーフ、セカンド・ハーフに続く、「サード・ハーフ」という意味)として知られるこの伝統は、サッカー界ではフーリガニズムが騒がれる今日のヨーロッパでも健在。 試合後の街ではどこでも、サポーターたちの気持ちいい喚声が夜深くまで響き渡り、何リットルかのビールがそれぞれの胃袋に消えていく。

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