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何も見つけられなかったイタリア –シックスネイションズレビュー–

2014/03/20

 今年のシックスネイションズのラストマッチ。代表のホームグラウンドであるスタディオ・フラミニオが改修中のため、57,750人のサポーターで埋まったスタディオ・オリンピコでイングランドを迎える名誉を得たイタリアだが、春を告げる穏やかな日差しに誘われて、持ち前の闘争心も忘れてしまったらしい。直後のフランス—アイルランドの結果次第では優勝の可能性が残されていたローズ(イングランド代表のシンボルはバラ)のモチベーションは高かったとはいえ、7トライを献上しての敗戦では、試合前に「来てくれるサポーターに感謝の念を見せるというためだけでも、とにかくやれることをやるよ」と言っていたフルバック、ルーク・マクリーンの言葉も今となってはむなしく響く。
 
 昨年のシックスネイションズではフランスとアイルランドを破り4位で大会を終えたイタリアだが、現状では他チームとの力量差は明らか。5試合を通じての総タックル機会は880(失敗108)、次に多かったウェールズですら708(失敗84)で、他の4チームは700以下。イタリアの数字だけが飛び抜けて高いのは、いかに守勢に回ることが多かったかを如実に表している。また総パス数でも、イタリアに次いで少なかったフランスの632を大きく下回る576(アイルランドに至っては832)。マイボールラックも305と、これもフランスの347に次いで最低(こちらも最多はアイルランドの520)で、守備時間に反比例して攻撃時間は減るという当然のセオリーが、データからも明らか。2009年以来の、6度目の「ウッドスプーン(5戦全敗)」も当然の結果とも言える。
 
 スコットランド20、23歳以下の代表経験もある20歳のスタンドオフトンマーゾ・アランや、今大会でそれぞれ2トライをマークしたセンターのミケーレ・カンパニャロ、ウィングのレオナルド・サルト、20歳で同じくウィングのアンジェロ・エスポジト、オーストラリア出身のロック、ジョシュ・フルノら若手も育ってきているが、2011年11月に就任したフランス人監督ジャック・ブリュネルのチーム改革は未だ道半ば。「すべてがうまくいかない時は、常に理由があるものだよ。去年と比べても明らかな後退だし、私たちが目指していた目標とも、この先の野望と照らし合わせても同様だ。今大会で何か興味深いものを見つけろといわれても難しい。今日、自信にあふれたチームを前にして、我々のチームは25分過ぎにはすでに、肉体的に明らかに苦しんでいた。この理由を理解するためには、包括的に物事を考える必要がある。目標と比べて、我々が現在持つキャパシティーがどれほどのものか。イタリア代表の大半の選手が今のところ将来がどうなるか知らないというのは、誰もが知っていることだ。どのような状況でプレーするかを知ることが出来ないというのは、プロの選手にとってはとても難しいことだよ」。イタリアのプロクラブチームの不透明な先行きとトレヴィーゾの消滅危機に言及しながら、試合後にブリュネルは答えている。
 
 守備重視といわれていたプレースタイルから、アタックの比重を増やし、バランスの取れたプレースタイルに脱皮することを目指している新生イタリア代表だが、伝統である接点での激しさとしつこさだけが薄れ、攻撃の機会は減少。わずかなチャンスも、才能はあるが現状では経験に劣る若いバックス陣が得点に結びつけられない。フランスと並び最強と謳われたスクラムも、今シーズンからの新しいレフェリングに対応できずに苦しんでいる。2015年のワールドカップではフランス、アイルランドと同組と、抽選直後はやれるかもしれないという希望も少なからずあったはずだが、今のままではカナダにすら足下をすくわれかねない。ワールドカップまでは1年余り。ベスト8という野望までにスクアドラ・アッズーラとブリュネルに残された時間は多くない。

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