top of page

ウェールズラグビー界の内戦 -代表キャプテンウォーバートンが所属クラブなし-

2014/07/15

 2015年イングランドワールドカップまでほぼ1年と迫って、ウェールズラグビー界が内戦の真っ只中にある。代表チームを統括するウェールズラグビー協会と、国内の4つの地方に1つずつ振り分けられたトッププロクラブチームを代表する団体、地方ラグビーウェールズ(日本ではトップリーグの統括団代は代表チームと同じ日本ラグビー協会だが、諸外国では代表とプロクラブチームの利害が相反することは当然で、プロクラブの統括団体は別に存在する)の間での軋轢が止まず、代表チームの絶対的なキャプテンであるサム・ウォーバートン(25歳、46キャップ)がワールドカップイヤーの今季にプレーする所属クラブが、いまだに決まらずにいる。「サム・ウォーバートンは、話し合いが解決しない限りは、どのウェールズのクラブチームでもプレーすることはない。そして、今のところ何もいい方向には進んでいない」と、地方ラグビーウェールズの代表者はウェールズラグビー協会を批判する。ウォーバートンは協会から直接雇われ、給料をもらっている選手であり、もし協会が望めば、クラブでプレーすることを妨げることも可能、ということである。

 

 今年1月、相次ぐトッププレーヤーの国外流出(ジェイミー・ロバーツ、ダン・リディエイト、リー・ハーフペニー、ジョージ・ノースら)に業を煮やしたウェールズの各クラブは、高給を提示して選手を呼び寄せるイングランドとフランスのトップクラブに対抗すべく、協会に助けを求めた。ますますの高まりを見せるサッカー人気にウェールズラグビー界は危機感を積もらせていることもあり、双方の思惑は一致するかに思われたのだが、半年以上経った今も話し合いは平行線をたどったまま。元ウェールズラグビー協会会長のデイヴィッド・モフェットは各クラブを批判する。「各地方の“君主と家臣”が全部コントロールしたがる。解決策はあるが、両者が話し合わなければならない」

 

 妥協点がなかなか見つからないのを見て協会側は、まだ国内に残っている代表選手とニュージーランドやオーストラリアのように協会が直接契約を結ぶことを提案したが、対象となった6人のうち、ウォーバートンは問題が早期決着することを望んで1月に契約にサインすることを表明したものの、リス・プリーストランド、スコット・ウィリアムズ、アランウィン・ジョーンズは態度を保留。協会との契約を拒む形になった。半年以上に渡る協議を経た現在も、代表チームへの選手の招集に関して、クラブ側と協会側は合意点を見つけられずにおり、今までの協約は6月30日をもって期限切れとなった。「それが双方にとって合理的であるならば、もっとしっかりした協定を作製することに何の問題もない。ただ、私たちは不正で偏ったどんなシステムも受け入れることはない」とクラブ側の代表は強調してから続ける。「1月6日以降、何回もの電話と会議にもかかわらず、新しい協約で協会側から私たちに対して明示された金銭面及び商業面における条件は、各スポンサーからは受け入れられていない」。

 

 ヨーロッパの各クラブがプレシーズンのトレーニングに入った今も、昨夏のブリティッシュアンドアイリッシュライオンズのオーストラリア遠征でもキャプテンを務めたレッドドラゴンズのフランカーは、いまだに所属クラブがない。直接代表チームと契約を結んでいる他国の選手はプレーできない規約があるイングランドのプレミアシップでプレーすることも不可能。開催国イングランド、オーストラリア、フィジーと同じ、まさしく死の組に入ったウェールズが、ウォーバートン抜きでプレーすることになるのを望まないのなら、本当に自国ラグビーの発展とワールドカップでの成功を思うのなら、協会、クラブ側の双方が、急ぎ打開策を見つける必要がある。そして、自ら犠牲となったウォーバートンのためにも。

Please reload

  • Wix Facebook page
  • Wix Twitter page

Copyright (c) kosuke hakoyama. All rights reserved.
本サイト内の記述、画像、写真の無断転載・転用を禁止します。

bottom of page