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イングランド、ガトランドの挑発には乗らず−ミレニアムスタジアムの屋根は閉じられず−

2015/02/06

 「天気がいいならどうして屋根が必要なんだ?」

 

 2年前のシックスネイションズ。雨のため屋根の閉じられたミレニアムスタジアム内に反響するウェールズサポーターの歓声と騒音で、選手たちがグラウンドでコミュニケーションを取れずに3−30というスコアで敗れたイングランド代表。再びカーディフに戻る今年、スチュアート・ランカスターは水曜日のメンバー発表の席で、いつも通りの穏やかな口調でそう言って、ミレニアムスタジアムの屋根を閉じることを拒否。「どちらのチームもいいコンディションでやりたいと思っている。向こうの有利に運ぶこともあれば、こっちに有利になることもある。どっちにしたってかなりうるさいはず。それに、夜だからどうせ頭上は真っ暗さ」と、イギリス人らしいウイットで続けた。

 

 グラウンド外の神経戦を先に仕掛けたのはウェールズ監督ウォーレン・ガトランド。2週間前のスクワッド発表の折、「2013年の敗戦は、深い傷となって癒すのにかなり時間がかかったと思うよ。イングランドが屋根を開くのか閉じるのか、楽しみだよ。前回の雰囲気はかなり強烈だったからね。多分、スタジアムの熱気を下げるために、屋根は開いたままにするだろう。彼らがこの挑戦を受け入れて屋根を閉じてくれたらいいんだけど。まあ、どうなるか見てみよう」と挑発。

 

 それを受けたイングランド代表も、ミレニアムスタジアムの雰囲気に慣れるためにキャンプ地では巨大スピーカーを設置して練習するなどして、受けて立つ素振りを見せていたのだが、それについて訊かれたランカスターは、「2年前にいなかった選手に、スタジアムで聞くことになる歓声がどんなものか体験させるためにやったけど、コミュニケーションがいかに大切かを確認するためのものでもあった。緊迫した雰囲気の時は、難しくなるからね。でも毎日やっていたわけじゃない。鼓膜がもたないからね」と、さらりとうけながした。

 

 屋根を閉じるためにはホーム、アウェイ両チームの了解が必要と決まっており、天気が悪くならない限り、今年のシックスネイションズのオープニングマッチは、屋根の開いたミレニアムスタジアムで行われることが決定的。

 

 2003年のワールドカップ優勝監督のクライブ・ウッドワードは、逆にウェールズにプレッシャーを与えるために、イングランドは屋根を閉じることを受け入れると強気に出るべきだったと述べ、「もしイングランドが本当にワールドカップを勝ちに行くのなら、熱狂する大観衆の中でもいつも通りプレーできなきゃけない。相手にプレッシャーを与えて80000人のウェールズ人を黙らせるために、屋根は締めるべきだ」と、イングランドの弱腰を批判。

 

 それでも、実は自ら仕掛けた罠に自らはまったのはガトランドとウェールズかもしれない。ランカスターが決断を明らかにする前には、あたかも屋根の閉じたスタジアムで戦うことが決まっているかのようにインタビューで話すウェールズの選手もいた。

 

 7ヶ月後に迫ったワールドカップで、同じ死のA組に入った永遠のライバル同士。先を見れば、当然ただの一試合以上の重みがある試合だがランカスターは言う。「大事なのは今目の前にあることだ。シックスネイションズの初戦で、ウェールズで戦う。それだけで十分だ」。

 

 屋根が開いていようとも、ミレニアムスタジアムの夜は熱い。

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