top of page

アイルランド対イングランド−現在の北半球最強チームを決める一戦−

2015/02/25

 開幕から唯一2連勝している2チーム。それも大会前から優勝候補に挙げられていたアイルランドとイングランド。アイルランド代表のディフェンスコーチレス・キスは「この試合の結果が大会を決めるとは全く思わない」と言うが、週末の試合に勝った方が優勝に大きく近づくことは間違いない。

 

 アイルランドは、去年の6ネイションズでイングランドにトゥイッケナムで10−13で敗れて以来、ここまでテストマッチ9連勝中。この試合に勝てば2002年から2003年にかけてマークした10連勝の最多記録に並ぶことになるが、イタリア戦、フランス戦ともジョー・シュミットの就任以来徹底されてきた統制のとれた守備でかたく勝ちを拾ったものの、「確かに二つ勝てて嬉しいけど、自分たちのパフォーマンスに満足してるとは思わない」とピーター・オマホニーも語るように、フランス戦ではたった5つのラインブレイクでノートライに終わるなど、いまいち流れに乗り切れていない。また、フランス戦でのパスカル・パペの蛮行でナンバーエイトのジェイミー・ヒースリップを失ったのも痛い。

 

 それでも、フランス戦後に元イングランド代表ワールドカップ優勝監督であるクライブ・ウッドワードが、「私だったら、世界一の監督に彼を推すね」と評したシュミットのゲーム分析と戦略は見事。ロックのデヴィン・トナーが「その微に入り細にうがった分析は驚くべきもので、どんな些細なことも逃さない」と表現する指導が選手にも浸透しつつあり、フランス戦では、3週間ぶりに実戦復帰のセクストンがフランスの巨漢センターバスタロをいかに押さえるかに試合前から注目が集まったが、ラインアウトではスクラムハーフとブラインドサイドウイングの位置を入れ替えセクストンをサポートするバスタロシフトを引いた上セクストンも男を見せ、バスタロを完全にストップ。ワントライを献上したものの、チームとしての守備が機能し、勝つべくして勝った試合だった。フランス戦ではミスもあったセクストンだが、復帰2試合目となる今回はパフォーマンスも上がるはず。また、昨年引退したブライアン・オドリスコルの穴を埋める、ロビー・ヘンショーとジャレッド・ペインの新生センターラインも代表レベルの試合に慣れつつあり、ロブ・カーニーとトミー・ボウは空中戦にはめっぽう強い。

 

 

 ここまで2試合で8トライ、68得点を挙げているイングランド。大会前、マニュ・ツイラギ、ブラッド・バリットら、センター陣に怪我が続出した影響で組まれることになったルーサー・バレルとジョナサン・ジョセフのセンター陣が大活躍。特にジョセフはここまで全選手中トップの9つのラインブレイクで、3トライをマーク。オーウェン・ファレルの怪我もあり(大会前からファレルの怪我がなくてもランカスターはフォードを1番手として使う意向だった模様)、より相手ラインに近いところでプレーし、パスも回せるジョージ・フォードを先発のスタンドオフに固定し、猪突猛進型のセンターの代わりに器用で機動性の高いセンターを置いたことで、攻撃のオプションが増えるという、イングランド監督スチュアート・ランカスターにとってはまさに怪我の功名。当然、フォード、ジョセフ、ウイングのアンソニー・ワトソンはバースのチームメートということで、お互いにプレーを知り尽くしているというのも大きい。

 

 その目立つバックス陣の活躍も、惜しみなく働くフォワードの仕事があってのもの。アタックではビリー・ヴニポラらが堅実にボールを前進させ、守備では、ここまで45のタックルを決めミスは一つのみで大会ナンバーワンタックラーのキャプテンクリス・ロブショーを中心に堅い守備が機能。代表復帰しワールドカップを目指すジェームス・ハスケルもキャリア最高のパフォーマンスを見せている。

 

 イタリア戦では守備で綻びが出たが、これも膿を出すためのいい機会。いくつかポジション取りなどでミスがあった快速ウイングジョニー・メイが週末のメンバーから外れ、ジャック・ノーウェルが代わりに入った。フルバックのマイク・ブラウンがイタリア戦での脳震盪から完全に回復せず欠場が決定したのは痛いが、バックアップにアレックス・グッドを招集。他のポジションに関しても、常連であるジェフ・パーリング、トム・ウッド、コートニー・ローズ、アレックス・コルビシエロ、ブラッド・バリットらが外れるという状況で、「いくつかタフな決断をしなきゃいけなかった」とランカスターも嬉しい悲鳴をあげるほどの選手層の厚さ 。

 

 いかにイングランドがいいバックス陣を持っていても、アイルランドの出だしの速い守備はそう簡単には崩せない。イングランドにとっては、フォワード陣がアイルランドフォワードを支配できるかが鍵になってくるはず。それができれば、フォードが浅いラインで突っかけてプレーすることができ、素早く上がる相手ディフェンスの裏にもスペースができる。

 

 一方のアイルランドは、チームの基盤である組織的なディフェンスが綻びなく機能することが大前提。ジョセフやワトソンにスペースを与えて走り回らせては後手に回ることになる。あとは、セクストンがいつものプレーを見せられれば、現在4連敗中の相手とはいえ、恐れる必要はない。

 

 基本的には、堅実な守備を基本に「取られる点」が計算できて、その相手よりも多く点を取るスタイルの両チーム。激しい打ち合いとはならないかもしれないが、グランドスラムの権利をかけて「らしい」戦いが見られるはず。

Please reload

  • Wix Facebook page
  • Wix Twitter page

Copyright (c) kosuke hakoyama. All rights reserved.
本サイト内の記述、画像、写真の無断転載・転用を禁止します。

bottom of page