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理想と現実の大きすぎるギャップ−ホームでウェールズに負けたフランス−

2015/03/03

 ウェールズ戦を控えた一週間、トリコロールの選手も監督も、口々に「大胆に」、「思い切ってプレーする」と話していたのだが、形になったのは68分のブリス・デュランのトライのみ。直後にかすかな期待を込めたラ・マルセイエーズがスタッド・ド・フランスに響いたものの、結局13−20で試合終了のホイッスル。決して良かったとはいえないウェールズ相手に終始守勢に回り、フィリップ・サンタンドレが監督に就任して以来、ウォーレン・ガトランドのレッドドラゴンズには4連敗となった。

 

「おれたちがやりたい思い切ったプレーをするためには、いくつかの動きにもっと慣れなきゃいけない。もっといいプレーができるはず。みんながそれをやろうとしたのは嬉しいし、安心したよ。全員が同じ方向を向いている。いいプレーの選択ばかりじゃなかったけど、リズムよく大きくサイドに回すチャレンジはできた。いいゲームができるんだということを意識しないと。自分たちのキャパシティーをやっとわかり始めてきたところだけど、まだまだ相手に対して優しすぎて、うまくゲームを作れなかった」

 

 怪我から復帰し、スコット・スペディングに代わってフルバックに入ったものの、3つのノックオンを冒し、空中戦でも支配権を握れなかったデュランはそう言って、目指しているラグビーの実践には更なる時間が必要だということを強調するも、サンタンドレ就任から既に3年が過ぎ、昨年の同時期には、「もうテスト期間は終わり」と指揮官自ら口にしていたのだが。完成度は別にして、アイルランド、イングランドを筆頭に、他チームは目指すプレースタイルがはっきりと見えつつあるのに、未だブルーはその色が濁ったまま。この3年間でフランス代表が試してきた選手の数は81人と北半球最多。世界全体を見ても、フランスよりも多いのは、世代交代と監督交代の影響で過渡期にあり、チーム改革がなかなか進まず115人もの選手を使っているアルゼンチンのみ。フランス代表選手が各々の細かい特徴まで掴みきれず、チーム内での連係が完璧でないのもある意味当然といえる。

 

「前半、パニックになっているという感じはなかった。数少ないマイボールも、トライを狙ってプレーしたし。ただ、あとちょっとだけ足りなかった。おれのユジェへのパスは50センチだけスローフォワードだった。そういう細かいところがこのレベルでは大事になってくる」

 

 ペナルティゴールを2つ外し、プレーの選択ミスも多かったスタンドオフのカミーユ・ロペスも、デュラン同様、やっているラグビーの方向性でなくプレーの精度の問題と見るが、今のフランス代表は理想と現実のギャップが大きくなりすぎて、やりたいラグビーがどんなものなのかすらもう見えない。ラインブレイクはウェールズの3つに対しフランスが5つ、オフロードパスも18個とウェールズの7を圧倒。それでもフランスが攻勢に回った印象を与えたのはごくわずかな時間のみ。点を取る形ができていないのが現状だ。

 

 速い球出しでチームにリズムをつけるも、再度の負傷で10週間の離脱となったスクラム・ハーフのモルガン・パラは、

 

「みんな同じ一つの船に乗っている。誰かのせいにしちゃいけない。ついてなかった。確かに支配できていなかったけど、力がないとはいいたくない。いつかは報われると思う」

 

と、優等生的な発言でお茶を濁すも、世界ランキング7位という格付けがフランス代表の現状だということを示す試合となった。

 

 キャプテンのティエリ・デュソトワールは、選手と監督の亀裂が公になり、完全にチームが崩壊していたにもかかわらず決勝まで行った2011年のワールドカップを引き合いに出して、何とかチームとして前を向こうとする。

 

「どんな順位にいようと、この結果に満足しちゃいけない。確かにここしばらく上位国には勝っていない。おれたちにとっては失敗だよ。でも、もしおれの記憶が正しければ、2011年の6ネイションズのフランスチームも大して良くはなかった。いろいろなことが急に良くなることがあることはよく知っている。慌てるのをやめて、それぞれが自分の力を発揮して自己主張しなければいけない。後悔を残すのをやめないと」

 

 後悔先に立たず。ワールドカップ開幕まであと200日を切った。永遠の後悔にしないための時間はそう多くない。

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