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コッターとシュミット。親友同士のニュージーランド人監督が、テストマッチで初めて対戦。

2015/03/19

 親友でありライバル。大会2連覇を狙うアイルランド代表監督ジョー・シュミット。ホームで何とかウッドスプーンを避けたいスコットランド代表監督ヴァーン・コッター。 お互いの性格もラグビーも知り尽くした二人のニュージーランド人監督が、初めてテストマッチの舞台で相見える。

 

 シュミットは、2003−2004年シーズンにニュージーランドのベイ・オブ・プレンティで、2007年−2010年シーズンにフランストップ14のクレルモンで、バックスコーチとしてコッターを補佐。2010年にクレルモンがトップ14で初優勝を遂げたのを最後にコッターの元を離れ、現オーストラリア代表監督マイケル・チェイカの後任として、アイルランドのレンスター監督に就任。就任初年度からチームをハイネケンカップ優勝に導き、翌シーズンも連覇を達成。プロ12では2年連続で決勝で敗れるものの、ラストシーズンとなった3季目は、念願のリーグ優勝を遂げ、欧州チャレンジカップも制し2冠。欧州クラブナンバーワン監督の称号を手土産に2013年春にアイルランド代表監督に三顧の礼で迎えられた。その7ヶ月後には、秋のテストマッチでニュージーランドをダブリンに迎え、81分過ぎまで22−17でリード。ラストプレーでゴール隅にトライを許し同点となり、クルーデンのコンバージョンが外れ引き分けかと思われたところで、アイルランドプレーヤーのチャージが早すぎたということでやり直しとなり、2度目のキックを沈められるという、悲劇的なシナリオで対オールブラックス初勝利を逃すものの、チームに自信を植えつけ、ファンには新生アイルランド誕生を強く印象づけた。年明けのシックスネイションズではイングランドには敗れるものの優勝。以降、先週末に同じニュージーランド出身のウォーレン・ガトランド率いるウェールズに敗れるまで、アイルランド代表最多タイとなるテストマッチ10連勝。各国メディアでも、現在欧州一の監督は彼との声が高い。

 

 2006年にクレルモンの監督に就任したコッターは、初年度から前年リーグ8位のチームをトップ14決勝まで導き、欧州チャレンジカップで優勝。地元企業であるミシュランの後ろ盾を背にリーグ有数の年間予算を誇るも、コッター就任まで7年間で7人の監督と安定せず結果が出なかったチームを、厳しいプロ意識と規律をもたらし改革。シュミットをコーチに迎えた2007−2010年シーズンを含め8年に渡る長期政権を築き、4度のトップ14決勝進出、2010年には悲願のブレニュス盾をクレルモンにもたらした。ハイネケンカップでも決勝トーナメントの常連となり、イエローアーミーをヨーロッパの強豪クラブへと育てあげた。クレルモンでの仕事が評価され、長年低迷が続くスコットランド再建の大任を託され、2014年5月に代表監督就任。以降、チーム改革の兆しは見えるものの、他国と比べると劣る選手層もあり、いいゲームをしても勝てない悪癖はなかなか払拭できずにいる。

 

「彼の方が全然上だよ!彼は頭の切れる男だ。チームを一つにして、いい結果をもたらした。彼の功績だよ。本当によくやっている。」

 

 大会開幕前、コッターはそう言って、代表監督としては自身をはるかに上回る結果を出しているかつての弟子を賞賛し、最終日に組まれているアイルランド戦での友人との再会を楽しみにしていた。

 

「いい時も悪い時も共にしたから、とても強い友情で結ばれている。ビールを飲みながら互いの家族がどうしているのか話すのも好きだけど、ラグビーとなれば、ジョーが私たちにタフなゲームを用意してくるのはわかっている。そして、互いに敬意を持っているからこそ、彼はおれが同じことをするって知っている。堅い友情と強いライバル心を同時に持てるというのはいいことだよ。」

 

  一方、優勝のためには可能な限り得点差をつけて勝ちたいアイルランドのシュミットだが、

 

「ヴァーンと私は試合の結果も気にしているけど、クレジットカードのダメージについても心配しているよ。エジンバラはビッグウィークエンドになるよ」

 

と言って、二人同様に仲良しのそれぞれの妻が、エジンバラで一緒にショッピングに繰り出すことを恐れていると笑う。

 

「僕の友人だ、よく知っているよ。とても鋭い男だけど、キウィの牧場主のような一面があって、自分のチームに対する貢献を過小評価されるのを好むきらいがある。」

 

 そうコッターを評するシュミット。滅多に笑わず、面構えも性格もいかにもお堅い雰囲気のコッターのフランス時代のエピソードを持ち出す。

 

「彼のフランスでのあだ名は『氷の目』だった。一言も発することなく震え上がらせることができた。選手だけでなく、コーチングスタッフもね!」

 

 一方でコッターは、笑顔を絶やさずジョークも多いが、ラグビーとなれば細部まであらゆる妥協を許さないシュミットを『笑顔の暗殺者』と形容する。

 

「それがラグビーのいい所さ。友情あってこそだ。」

 

 そう言って、一見正反対に見える長年の親友同士が、それぞれ母国とは違う代表チームを率いてテストマッチで真剣勝負できることを喜ぶコッター。次のオールブラックスの監督にこの二人のコンビを推す声も聞こえている。下馬評ではアイルランド圧倒的有利だが、結果以上に、二人の過去と未来を想像しながら、目の前の試合を見るのも楽しいかもしれない。

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