top of page

初戦から負けられなくなったスコットランド

2015/09/23

 日本戦での敗戦で、優勝しない限りは解任決定と騒がれているハイネケ・メイヤーだが、実はこの試合の結果に一番頭を悩ませているのはスコットランド監督ヴァーン・コッターかもしれない。

 南アフリカにとっては勝って当然、あわよくば勝ち点5と誰もが思っていた開幕ゲームを日本相手に落としたとあって大騒ぎになっているが、4トライを奪ってのオフェンシブボーナス1に、7点差以内での負けに与えられるディフェンシブボーナスもついて、結果的には引き分けと同様の勝ち点2を獲得。勝った日本が勝ち点4と、2点しか差がないことを考えても、計算上は1次リーグ敗退を今から危ぶむ必要は全くない。

 

 逆に困ったことになったのがスコットランド。日本が南アフリカ相手に勝ち点4を獲得したことで、日本戦の結果に関わらず「最悪南アフリカには負けてもいい」という選択肢がなくなった上に、簡単ではない大会初戦のゲームが、勝てるはずのものから勝たなければならないものに変わってしまった。

 

 今年のシックスネイションズでも、マーレーフィールドでのイタリア戦も含め5戦全敗のスコットランド。日本側からすると、スプリングボクスよりは与し易しと見えるかもしれないがそう簡単にはいかないはず。

 

 「ここ6週間はかなり日本についての準備をしてきた」とディフェンスコーチのマット・テイラーが語るように、緻密な仕事で知られるコッターのこと、南アフリカ相手の大番狂わせの前から、日本についてのデータもしっかりチェックして周到に準備もしているはず。その上、南アフリカ戦のおかげで最新のジャパンも分析することが出来た。

 代表チームの結果だけがまだついてこないが、スコットランドラグビーは数年来の地道な強化が身を結びつつある。クラブレベルではグラスゴーがここ2年続けてプロ12の決勝まで進出し、昨シーズンは念願の初タイトルを獲得。エジンバラは昨シーズンの欧州チャレンジカップで決勝まで進出している。

 

 2014年6月には、フランストップ14クレルモンで8年間監督を務め、クラブをヨーロッパ有数の強豪に育て上げ、念願のブレニュスをもたらした知将ヴァーン・コッターが代表監督に就任。レンスターでの成績とアイルランド代表の復活で今や欧州一の監督との評価を受けているジョー・シュミットが、ニュージーランドのベイ・オブ・プレンティとクレルモンでアシスタントコーチとして働いていた時のヘッドコーチがコッターである。

 

 今回のワールドカップまでには時間が足りなかった間が否めないが、コッター就任後のスコットランドはクレルモンでも見せたボールを速く動かしグラウンドを大きく使うアタッキングラグビーが徐々に浸透。グレイグ・レイドロー、デイヴィッド・デントン、リッチーとジョニーのグレイ兄弟に、フィン・ラッセル、スチュワート・ホッグらヨーロッパでもトップレベルの才能も揃い、非力なフォワードが押し込まれ、決め手のないバックスはトライが取れないといった姿は今は昔。

 

 ワールドカップ直前のテストマッチではともにベストメンバーではなかった初戦のアイルランド戦が22−28の敗戦。次戦のイタリア戦は辛勝だったものの、メンバーを入れ替えた3戦目は48−7でイタリアを圧倒。最後のテストとなった9月5日のフランス戦は敵地パリで16−19の敗戦という結果だが、これは、テストマッチということもあり80分を回ってゴールほぼ正面22メートル付近で得た同点のペナルティーキックをあえて狙わずにトライを取りにいったため。日本戦では、怪我ですべての試合を欠場していたホッグが復帰することを考えれば、チーム力はさらに上がる。

 

 「誰もが、南アフリカ相手では日本の体力は1時間で切れると思っていたと思う。でも、そうじゃなかった。日本がやってくることはすべてが危険だと認めなければ」とニュージーランド人監督は警戒する。

 

 ジャパンにとっては、南アフリカ戦で85分間続けられると証明したあのパフォーマンスを、今度は中3日で休養十分のスコットランド相手に再び80分見せられるかどうかが鍵になる。

 

 「素早く判断し、素早くプレーすることが重要になる」

 

 コッターの言葉はジャパンにとっても同様である。

Please reload

  • Wix Facebook page
  • Wix Twitter page

Copyright (c) kosuke hakoyama. All rights reserved.
本サイト内の記述、画像、写真の無断転載・転用を禁止します。

bottom of page