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メイヤーとハンセンとビールと。

2015/10/24

 今や試合前日には必ずディナーを共にするほどの仲という南アフリカ監督ハイネケ・メイヤーとニュージーランド監督スティーブ・ハンセン。ハンセンに言わせれば「ロンドン中を動き回るのは悪夢」ということで恒例のディナーは今回はお流れということだったが、試合後のビールはどっちが勝っても確からしい。

 

「この習慣は私が初めてニュージーランドに負けたときから始まったんだ。これがラグビーの素晴らしいところだが、本当に沈んでいた私のところに、スティーブがビールを持ってやってきて言ったんだ。『君がどんな気分なのか分かる。どれほどのプレッシャーがかかっているかも。ただ私と一緒にビールを一杯飲んでくれないか』。彼の振る舞いを本当に尊敬したよ。次の試合もまた私たちは負けてしまった。彼はまた別のビールを持って私に会いにきた。彼は私にビールを手渡すと、彼の家族や奥さんの話を始めた」

 そう二人の友情の始まりを語るメイヤー。

 

「私たちは同じプレッシャーを受けているのを知っているし、それぞれの祖国に誇りを持っている。そのうち、彼の家族を紹介され、私も彼に私の家族を紹介した。基本的に試合前に相手監督に会うことはしないのだけど、スティーブとの間にはあまりにも大きな敬意があるから」

 

 ただ、2012年の監督就任以降なかなかニュージーランドに勝てなかったメイヤー。

 

「ある時彼に言ったんだ。いつか南アフリカが勝ったら私がビールをワンケース持っていくと」

 

 メイヤー率いるスプリングボクスがハンセンのオールブラックスを初めて破ったのは5連敗後の2014年。ヨハネルブルグのエリスパークだった。

 

「私がスティーブを尊敬するのは、私たちが彼らに勝った試合の後、スティーブは男らしく私のところに来て言ったんだ。ビールを待っているよと」

 

 「自分がやったらきっと心臓マヒを起こすよ。どうやって彼が今までマヒを起こしていないのか不思議だよ」とハンセンが笑うほどの試合中の激しい感情表現にあの強面。ハイネケ・メイヤーという監督、わたくし勝手に怖ーいキャラをイメージしてしまっていましたが、流石は一癖も二癖もある世界最高の選手達を世界最高のチームの一つでまとめあげる男。ワールドカップ直前の国内での「スプリングボクスは白人優先主義」という政治色の強い批判と大会ボイコットの脅しにも折れず、そういえば、日本戦での敗戦後も一言も言い訳せず、一人全ての責任を引き受けて国民に謝罪していたっけ。

 

「土曜日、スティーブにビールを持っていけるといいんだけど !!」

 

 ああ、(見かけによらず)なんてさわやかラグビー精神。もう、勝ち負けはどうでもいいので、最高のゲームをやってください。

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