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母国のワールドカップ優勝に30万豪ドル賭けたオーストラリアラグビー協会

2015/10/27

 オーストラリアラグビー協会が、ワラビーズのワールドカップ優勝に30万豪ドル(日本円で約2600万円)を賭けていた。

 

 ワールドカップイヤーで縮小版となった今年のラグビーチャンピオンシップで全勝優勝。ワールドカップ本大会に入ってからも、イングランド、ウェールズと同居した「死の組」を無敗のまま突破し、決勝トーナメントに入ってからも、選手個々の経験値の高さからくるダントツのゲームマネージメントの上手さで厳しいゲームをモノにしてきたオーストラリア。今でこそ、「ニュージーランドに勝てるとすればオーストラリアだけ」と、決勝進出が当然のような扱いだが、ちょうど一年前の今頃は、ラグビーチャンピオンシップでの不振と代表チーム内のゴタゴタで辞任に追い込まれたユアン・マッケンジーに代わって、現監督のマイケル・チェイカの就任が発表されたばかり。直後のヨーロッパ遠征では初戦(直前のバーバリアンズとの親善試合は勝利)のウェールズ戦には辛勝したものの、続くフランス、アイルランド、イングランドには3連敗。世界ランキングも6位まで落ち、国外はおろか、国内でも翌年に迫っていたワールドカップでのオーストラリアの活躍には懐疑的な見方ばかりだった。

 そんな状況だったにもかかわらず、チェイカの監督就任でチームが再びまとまるのを感じたオーストラリアラグビー協会は、その低迷振りでオッズが上がっていたことにも目を付けて、何と30万豪ドルを自国の優勝に賭けるという暴挙(?)に打って出た。

 当然、チーム関係者が直接賭けに関わるのはワールドラグビーの規則で御法度(そういえば、日本ではどこかの紳士たる野球チームの選手数人が問題になってますが)。今回使われたのは、保険会社がブックメーカーとの仲介役になるという、法的にも認められた方法。

 

 実はこの賭け、オーストラリアラグビー協会の苦肉の策だった。

 近年慢性的な赤字経営にあるオーストラリアラグビー協会だが(オーストラリアでの15人制ラグビーの人気は、オージーフットボール、ラグビーリーグ、クリケットには及ばない)、選手会側との契約で、ワラビーズがワールドカップで優勝した場合には31人の各登録選手にそれぞれ10万豪ドルの優勝ボーナスを支払うことになっており、それ以外の試合ごとの出場給なども含めると、優勝の場合には総額471万豪ドル(約4,1億円)を支払わなければならないことになる。協会側は賭けの詳細については明かしていないが優勝ボーナス分はカバーされると見られており、優勝という万が一の支出に備えての保険が、30万ドルの「投資」だったわけである。

 

 チームが勝ち進むほど協会は貧窮し選手の懐は潤うという相半関係にありつつも、目指すところは一緒という不思議な共同戦線も土曜日がファイナル。

 選手達はお金よりも何よりも、まずあのウェブ・エリス・トロフィーが欲しいだろうし、協会は国内でのラグビーユニオン人気復活のためにはどうしても優勝が欲しい。それに、決勝進出ですでに各選手への54,500豪ドルの支払いが決まっており、協会としてはここまで来たら勝ってもらわないと困る。

 ワールドカップ開幕まで1年を切っての監督交代に、30万ドルのギャンブル。もし、グリーンアンドゴールドのジャージが10月31日現地時間午後6時にトゥイッケナムで笑っていれば、オーストラリアラグビー協会が稀代の勝負師だった証になる。

 ちなみに、この種の「保険」そこまで珍しいものでもなく、2011年大会ではイングランドが、今大会でも他にアイルランドが「掛けて」いた。結果は、皆さんご存知のとおりである。

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