
欧州楕円球事情
ヨーロッパラグビー通信
image © kosuke hakoyama

新生フランス代表出航。
2016/02/05
初キャップは、LOポール・ジェドラジアック、SHセバスチアン・べジー、CTBジョナタン・ダンティ、WTBヴィリミ・ヴァカタワの4人。ベンチ入りのシャ、ポワロ、カマラを加えれば7人になる。
デュソトワール、パペ、ザルゼウスキが代表引退したものの、ワールドカップのニュージーランド戦時の先発メンバーが5人残ったフォワードとは対照的に、バックス陣は総入れ替え。
そのスピードとパス、判断力で完全にトゥールーズの先発スクラムハーフの座をつかんだベジーと、怪我で昨年のワールドカップには間に合わなかったが、間違いなく2019年ワールドカップの10番候補のプリソンのハーフ団(控えのスタンドオフに疑問の余地があるドゥーサンが入っているのは、怪我から復帰直後で体調が完全でないトランデュックにもう一つの席は空けておくというノヴェスのメッセージ。フランス国内では、一番手のスタンドオフはトランデュックという見方も強い)。
ここ数年「プティ・バスタ」とバスタローと比較され続け、ついに本家に取って代わったダンティは、バスタローの当たりの強さにスピードも兼ね備え、まるで体重を増やす前の若い頃のバスタローを見ているよう。
ボンヌヴァルも左膝の十字靭帯の断裂でワールドカップを棒に振ったが、父親のエリック・ボンヌヴァルは元フランス代表、弟のアルチュールもトゥールーズで台頭中と、正真正銘のサラブレッド(ちなみに恋人は元美人テニス選手タチアナ・ゴロビンですでに一子あり)。1年以上も実戦から遠ざかっていたのでまだ絶頂期の動きには足りないが、完全復活してさらなる成長を遂げれば、メダールを追い落としてフルバックでプレーするはず。
そしてヴァカタワ。今やセブンズ界のスーパースターの一人だが、最後に15人制でプレーしたのは2年以上前ということで、ユジェ、フォファナ、ファル、グロッソら、ウイングが軒並み怪我という状況を鑑みてもサプライズ。それでもノヴェスは「賭けではなくて、一つの選択だ」と意に介さず。ディフェンス面での不安は残るが、身体能力とボールを持った時の爆発力はすでに証明済み。確かに、いつか使うことになるのなら、一番リスクの少ないこのイタリア戦でデビューさせるのが理にかなっている。
1990年から93年までの休止期間を挟み、1988年から2015年まで指揮をとったトゥールーズで、ボールと人が流れるように大きく動く攻撃ラグビーを植え付け、10度のフランスチャンピオンと4度の欧州王者を獲得し名実ともにトゥールーズを欧州一のクラブたらしめたギイ・ノヴェスの色が出た、特にバックスに関しては、ワクワクさせるメンバー構成である。ここ数年、「消滅した」と言われていたフレンチフレアの復活を期待する声も聞こえてくる。
にもかかわらず、なぜかフランス国内はファンもメディアも盛り上がっていない。
「大失敗」と揶揄されたワールドカップのニュージーランド戦の大敗が尾を引いているのと、イタリア相手なら勝って当たり前、という雰囲気がサポーターの間にあり、お高くとまって本気になりきれていないところがある。残りのホームゲーム、アイルランド戦とイングランド戦はすでに完売のスタッド・ドゥ・フランスも、イタリア戦は満員にはならない予定。
それでも、勝てば手のひらを返したように騒ぎ出すのがフランス人。イタリア戦以降でも結果が出れば、新チームということも相まって、この4年間で地に落ちた代表人気に再び火が付くかもしれない。
11月13日のパリ同時テロで標的になったスタッド・ドゥ・フランス。あの日以来の試合開催となる。大統領のフランソワ・オランドが観戦することも発表された。古い荷物を降ろし、新しい船長と船員を乗せた新たなブルーの出航だ。
Copyright (c) kosuke hakoyama. All rights reserved.
本サイト内の記述、画像、写真の無断転載・転用を禁止します。