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6ネイションズ2016 第2節、雑感

2016/02/18

 今年の6ネイションズ、第2節が終了し6試合が行われたところだが、各国の評論家の見方がかなり厳しい。確かに、第1節のスコットランド−イングランドは、カルカッタカップらしくフィジカルは前面に出たものの美と創造性という面においてはほとんど見るところはなかったし、フランス−イタリア戦の打ち合いは、イタリアの思い切りの良さもあったが、双方のディフェンスの甘さに起因した。アイルランドの著名なラグビー評論家ジョージ・フックは、先週末のフランス戦の敗戦を「エンターテイメントに対する侮辱」とまで言ってのけた。
 それでもこれはある意味予想できたこと。ワールドカップ直後の年はシックスネイションズを開催しないほうがいいという意見もあるように、監督の交代があり新チームのところは時間が足りず(そのためにイタリアはブリュネルと、あえてワールドカップ後ではなく6ネイションズ後までの契約を結んでいた)、ワールドカップからレギュラーシーズンの連続で疲弊気味の選手もいる。また、2月、3月の開催は6ネイションズの伝統。冷たく湿ったヨーロッパの冬、今でこそミレニアムには屋根がついたが(プリンシパリティがまだしっくりこない)、雨が降り劣悪なグラウンドコンディションになることも多く、それが魅力の一部にもなってきた。過去最高の大会との評価も受けた4ヶ月前の祭典と比べられると分が悪いのは当然だろう。
 前節のイタリア戦を受けて週の間はディフェンス練習に多くの時間を費やしたフランス代表はその効果が出た。ガエル・フィクーの不在で経験豊富なマキシム・メルモーズがセンターに入ったことで、守備の連携が良くなりバランスがとれ、アイルランドの手駒不足にも助けられて、80分我慢しきった。ノヴェスも会見では、先発両プロップを入れ替え後半投入したコーチングを賛辞する声に、そうではなくてまずチームとしてのディフェンスの出来を強調。「スタッフと選手の間でしっかり意見交換ができているから、グラウンドで怖がることなくプレーできる」とプリソンが言うように、アタックに関しても完成型には程遠いが、リスクを背負ってでもチャンスがあればどこからでもボールを繋ぎできるだけピッチを大きく使うという、やりたい形は見えてきた。「将来の土台づくりかって?あと何週間かすればわかるよ… でも、このチームは他の試合も勝てる気がする」と、フランス代表としては2011年以来のアイルランド戦勝利ということでノヴェスも珍しくご機嫌、何よりもサポーターが大喜びだったが、低調なアイルランド相手、試合自体のレベルが低かったのも事実。

 アングロサクソンのメディアでは、反則紛いのタックルでセクストンを潰しにかかったフランスを糾弾する論調も目立ったが、残念ながら狙われるのは仕方がない。反則かどうかはレフェリーの裁量に委ねるしかない。

 ワールドカップでは真っ向勝負でフランスを叩きのめしたアイルランドだったが、今回は突破口は見つけられないまま。確かに主力に怪我人が続出しているということもあるが、現状ではこれが精一杯という感もある。オコンネルの引退で一時代を築いたメンバーはみんないなくなり、チームは過渡期。シュミットが、ブライアン・オドリスコル、ゴードン・ダーシーという当時世界最高のセンターコンビを要してレンスターでハイネケンカップを連覇した頃の華麗なプレースタイルと比べてみても、プレーの抽斗は若干少ない。守備に関してはチームとしてシステムでカバーでき、波も少なくそれがアイルランドの強みでもあるのだが、アタックに関してはやはりどこかで才能が必要になってくるわけで、まだその才能が足りていない。ロビー・ヘンショー、ガリー・リングローズら、若手にもう少し時間が必要。それと、スタンドオフが常に爆弾を抱えているというのはやはり不安が大きい。

 またも惜しい試合を落としたスコットランドだったが、生命線であるセットピースが安定しなかったのと、とっておきの飛び道具であるスチュアート・ホッグを負傷で失うアクシデントが痛かった。ガレス・デイヴィスのトライシーンについて、クランシー主審の判断ミスを疑う声も聞こえたが、残り時間はロスタイムのみとはいえ逆転も可能だった状況であの単純なノックオンをしているようでは、どちらにしても勝者の資格はないだろう。チームの戦力は他国と遜色のないところまで来ている。あとはあの負け癖をなんとかしないと。

 ワールドカップ前のイタリアとの親善試合以来トライがなかったジョージ・ノースにトライが出て、ウェールズファンは一安心。本人も認めているように、ノーサンプトンのスタイルが合っているとは言いがたく、調子を落としているわけでもないのにしばらくらしいプレーから遠ざかっていたが、スコットランド戦では106メートルを走り随所でいいプレーを見せた。初戦のアイルランド戦と比べると、テンポが上がって見えたウェールズ。この日もジェイミー・ロバーツが攻守にわたり活躍し、ガレス・デイヴィスも、リース・ウェブの不在を感じさせない出来だった。ナンバーエイトのファレタウはここまでの2試合で大会最多の33タックルでノーミスという驚異的な数字。
 イングランドはジョセフのハットトリックが目立ったが、スコットランド戦でも勝因となったフォワードの接点でのハードワークが見事。「ジャパンウェイ」同様、ジョーンズがイングランドにもたらしたのは、まずイングランドらしさか。それでもまだまだ物足りないようで、「あと30パーセントはフィットネス上げさせるよ」とのこと。 将来のスーパースター候補、マロ・イトジェがついに初キャップ。サラセンズではロックでプレーすることも多いイトジェをあえてハスケルに代えてフランカーとして投入。ロブショーに代わって入ったジャック・クリフォードとビリー・ヴニポラを加えた3人が、ジョーンズが今現在で見ている2019年の第3列の形だろう。問題はラインアウトと反則の多さ。次節アイルランド戦に向けては、あってもマイナーチェンジのみのはずだが、ウェールズ戦については先月15ヶ月ぶりにグラウンドに復帰したレスターのセンターマヌ・ツイランギを「可能なら呼んでみたい」とジョーンズがコメント。ジョーンズはツイランギをインサイドセンターで使いたい意向をみせているので、もしそうなったとしたらフォードとファレルのどちらをスタンドオフとして使うのかが気になるところ。

 フランス戦では何度も見せ場を作ったイタリアだったが、イングランドフォワードの圧力に完全に屈して手も足も出なかった。やっぱりラテンか。それでもカンパニャーロは再びいいランを見せ完全復活を印象付けたし、スタンドオフのカンナも少しずつテストレベルに慣れてきた。今回はほとんどの選手をイタリア国内クラブから呼んでいるイタリア代表、ブリュネルとの契約は今大会限りで終わりだが、一時代を築いた古株をはじき出す芽がやっと出始めてきた。

 今週末は一休み。イギリス、アイルランド、ウェールズらの代表チームは、代表でのプレー時間の少ない選手のみ、プレー時間を与えるためにクラブに送り返すことになるが、フランスには代表チームに選手を拘束する権利がなく選手は全員クラブに帰り週末のゲームに備える。代表チームはクラブ側との「紳士協定」に頼らざるをえないという状況である。基本的には各クラブとも代表レギュラー格の選手は休ませる方針を見せているが、果たしてどうなるか。

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