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6ネイションズ2016 第5節、雑感

2016/03/30

 イングランドにとっては2003年以来のグランドスラム。この時は8ヶ月後にシドニーでウェブ・エリストロフィーを掲げることになる必然の勝利だった。

 度重なるグラウンドでの愚行でワールドカップを逃したハートリーをキャプテンに任命すると同時に、ロブショーの負担を減らし自身のプレーのみに集中させる。ランカスター時代は許されていたオフの日の選手の帰宅を廃止し週の間中ペニーヒルに軟禁、家族が訪問する形にしリカバリーの時間を増やすなど、早速改革をもたらしたジョーンズ。イングランドにとっては2003年以来のグランドスラムということもあり、辛口のイングランドメディアもこぞってオーストラリア人監督の手腕を絶賛しているが、チームそのものについてはイトジェらニューカマーの選手も含めて、時間がなかった今回はランカスターが地道に続けていた仕事をそのまま受け継いでマイナーチェンジを加えただけに過ぎない。

 逆に言えば、ジョーンズ色が現れてくるのはこれから。スコットランド戦後には、求めるラグビーに選手のフィットネスが追いついていないと苦言、夏のオーストラリア遠征時には30パーセントのアップが必要と明言している。ジョーンズ就任からまだたった4ヶ月。チームの平均年齢も24歳と若くまだまだ成長途上で、伸び代は無限。

 フランス戦後の記者会見で、ニュージーランドに勝てるかと訊かれ、「今は無理だけど、勝てるようになるよ」と答えたジョーンズ。「今は無理だけど」に、ますますの現実味を覚えた。

 

 やっぱりクランチは違う。ブルーの選手はあの薔薇のエンブレムを目にすると勝手にモチベーションが上がるらしい。フランスにとっては今大会ベストのゲーム。イングランド選手が相手の気迫に怯むのを今大会初めて見た。

 3連敗で手のひらを返したメディアからは、何がやりたいのか見えてこないという批判の声が上がったが、ノヴェスがトゥールーズで作り上げたトーラルラグビーの全盛期もこんな感じだった。チームとしてのプレースタイルはあるが、ゲームではそれぞれが場面に応じて臨機応変にベストのプレーを選択する。それがあの流れるようなラグビーの生命線だった。試合後、フォワードコーチのブリュが言ったのは「大事な局面での判断力のアップ」。当時のトゥールーズのバックス陣はほぼ全員がフランス代表というレベルの高さ。今のフランス代表に求められているのは、まずスタイルに追いつくための選手個々のレベルアップ。

 「最初の2試合は取れるが、あとはしりすぼみ」というのが、前監督フィリップ・サンタンドレの大会前の予想。イタリアは格下。アイルランドは怪我人も多く調子を落としている。ただ、そのあとは、6ネイションズの中休みの週末にクラブの試合に強行出場させられるフランスの選手は疲れてしまって続かないと主張。その通りの結果になり、サンタンドレ自身が任期中から指摘してきた、代表よりもクラブが力を持つフランスラグビー界の課題が再び浮き彫りになった。

 

 唯一練習試合の匂いが漂っていたのがイタリア。今後のために若手を起用、経験を積ませた大会だったが、パリセがフラストレーションを溜まらせているのは明らかだった。

 ウイングのサルトを獲得したグラスゴーは大正解。カンパニャーロらを含めて、才能ある若いバックス陣が新監督コナー・オシェアとアタックコーチマイク・キャットの元で一皮剥ければ面白い。

 「カストロ」ことカストロジョヴァンニの代表ラストゲーム。2006−2007年シーズンには、アビバプレミアシップの年間最優秀選手に選ばれ、長い間欧州のベストプロップの一人だった。積み上げたキャップ数は119。見事なまでのラテン気質で、良くも悪くも目立つみんなの人気者だった。

 これで、パリセを除いてほぼ世代交代終了。

 

 イタリア相手の最終戦ということもあり、久しぶりにノビノビラグビーのウェールズ。

 2人、3人余ってるところでロバーツが突っ込むなど基本的なミスも見られたが、後半には、浅すぎたバックスラインを修正しトライにつなげるなど、流石のラグビー能力の高さ。

 ノーサンプトンでのようなプレーを代表ではしばらく見せられずにいた怪物ノースの代表チームでの復活は、より攻撃的なプレースタイルへのシフトチェンジのおかげ。ワールドカップで一区切りつき、ガトランドが重い腰をやっと上げた。

 ところで、いつも思うんだがどうしてウェールズファンはあんなに仮装が好きなんだ?あのラッパスイセンやネギのかぶりものを見るたびに、ますますウェールズが大好きになっていく。

 

 アイルランドとスコットランド。一番真面目そうな両チームのカードがこんなに熱くなるなんて。

 

 スコットランドの選手があんなに突っかかっていくなんて久しぶり。準備時間の足りなかったワールドカップで結果を出し、今大会も、負けたゲームも含めてすべて好ゲーム。自信をつけて負け癖も抜けたかと思ったが、ここで勝てないのがやっぱりスコットランドか。

 コッタースコットランドは、点が取れるようになったおかげで先制されても昔のように慌てる必要がなくなった。個人的には、ホッグは次のライオンズツアーの15番に決定。万全の状態でオールブラックスとやってるところを是非見たい。

 それにしても、ディシプリンの欠如で負けたとなるとコッターはお冠だろう。

 

 アイルランドも、80分、リードしてひとり少ない状況にもかかわらず、マイボールのスクラムから蹴り出さずにもう一つ余計なトライを取りにいくという、完全な意地の張り合い。消化試合などとは言わせないガチンコ勝負は面白かった。いつもこういう姿勢で戦うのが代表チーム。だからこそ常にサポーターもついてくる。

 

 今年もシックスネイションズが終わり、暦の上では春が来た。先週末には冬時間も終わり、サマータイムに移行した。この後は、欧州各リーグがいよいよ佳境に入る。

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