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トゥーロンのワンマン会長ブジェラル、開幕3試合で新監督探しに

2016/09/08

 今季のホーム初戦をブリーヴ相手に21−25で落とした直後の記者会見、トゥーロン会長ブジェラルは怒りで紅潮した顔でまくしたてた。

 

 「トゥーロンの会長になってこれで11年目だが、今日の試合は最も酷い試合のトップ3に入る。ひょっとしたらトップかもしれない。おれのチームがここまで酷いプレーをするのはほとんど見たことがない。選手たちはどうしてかと考えないといけないし、他のチームスタッフも同様だ。全員で乗り切らないといけない。もし全員で乗り切れなかったら、それでもやらなきゃいけないが、みんな一緒ではなくなる。おれは勝利の会長じゃない。ひょっとしたらおれが選手補強を間違えたのかもしれないし、そうではないと祈っているが、おれのコーチングスタッフの選択がまずかったのかもしれない。あと数試合見てみるよ」

 

 ここ数年、そのストレスとプレッシャーから毎年のように会長職を退くことをほのめかしているブジェラルだが、つい先日アメリカと中東からの1500万から2000万ユーロのクラブ買収オファーを両方とも断ったということで、まだまだトゥーロン会長職を離れる気はないらしい。となると、クラブを離れることになるのはコーチングスタッフということになる。

 

 開幕から3試合で、昇格組のバイヨンヌ、ポー、ブリーヴと、「降格候補」相手に1勝2敗。ポーでの勝利も、ラストプレーで2人人数で勝る相手が焦ってゴール前のペナルティでスクラムを選ばず早いスタートで自滅してくれたおかげで、ブジェラル曰く「勝っちゃいない。ポーが負けてくれた」ゲーム。どの試合も、主力の怪我とツイソヴァのオリンピックによる不在を鑑みても、プレー内容は欧州チャンピオンズカップを連覇中の頃とはたしかに雲泥の差がある。

 

 昨季限りで黄金時代を築いたベルナール・ラポルトが去り、ディエゴ・ドミンゲスが新たにヘッドコーチに就任。昨季は3季ぶりの無冠に終わったことからもわかるようにチームは過渡期。他のクラブならここまで大騒ぎになることもないだろうが、血の気の多いブジェラルだとそうはいかない。試合翌日にはディフェンスコーチのグラント・ドーレイを解雇。週明けには、試合後のロッカールームで選手たちに「コーチ陣をクビにして欲しいなら言ってくれ、でもうつむくのだけはやめてくれ!」と言ったことがメディアで流れ、ドミンゲスを連れてきたのは自分自身にもかかわらず、「もし、モエド・アルトラド(モンペリエ会長)が、おれがディエゴを選んだ3ヶ月後にガルティエをクビにするって知ってたら、ドミンゲスは獲らなかったよ」とまで言い出す始末。 シーズンオフの間には、ブジェラルが独断で呼び寄せたマルク・ダルマゾの加入を知らされていなかったことに腹を立てたドミンゲスの辞任騒動があったばかりで、「トゥールーズ戦の出来次第」と執行猶予を与えられた形のドミンゲスだが、クラブを離れるのはほぼ決定的とみられている。

 

 後任候補としてはヴァーン・コッター、ハイネケ・メイヤーなどの名前も挙がっていたが、今日のレキップ紙によれば、元フランス代表SHファビアン・ガルティエがヘッドコーチ就任に大筋合意したとのこと。ダルマゾのフォワードコーチとしての加入も本来はガルティエのヘッドコーチ就任が前提で、これがもともとブジェラルが望んでいたプラン。ガルティエが来る場合には、当然現フォワードコーチのジャック・デルマスとバックスコーチスティーブ・ミーハンはお役御免となる。問題は、ガルティエが現在、2014年シーズン途中で解任された前所属クラブであるモンペリエと違約金をめぐって法廷調停中で、12月末までは他クラブで指揮がとれないこと。ガルティエ招聘のためには1月まで待たないとならないが、今週末のトゥールーズ戦(アウェイ)から、ラシン(アウェイ)、クレルモン(ホーム)、モンペリエ(ホーム)と優勝候補相手の厳しい日程が続き、ブジェラルが焦っているのは明らか。

 

 「夢見ちゃいけない。今夜(3日、ブリーヴ戦後)の出来を見れば、トゥールーズでは勝てないよ。ラシン相手にも。ドーピングでもしない限りは。口の悪い奴らは、トゥーロンがドーピングをやめたから負けたっていうかもしれない。以前のようにドーピングしなくなったからだって。現在軍隊モードのクレルモンにも勝てるとは思わない。緻密で、外科手術並みに正確なラグビーをやっている。モンペリエもホームでの敗戦を取り返さなければいけないはずだ。現実ははっきりしている。第7節終了後に順位表を見せるよ。うまく行って勝ち点8か9。それでプレーオフとはサヨナラだ」

 

 そういった事情から、もう一人有力候補として名前が挙がっているのが昨季までバースの指揮をとったマイク・フォード。2013年にヘッドコーチに昇格すると、革新的なラグビーでたった2シーズンでバースをプレミアシップ決勝まで導くも、2015−16シーズンはワールドカップの影響をもろに受けてレギュラーシーズン9位と低迷。イングランドのブジェラルと形容されることもあるオーナーのブルース・クレイグはフォードをあっさり解雇。クルセイダーズからトッド・ブラックアダーを呼び寄せたのは記憶に新しいところ。そのフォードとブジェラルは9日にも面会の予定。ドミンゲスが近日中に解雇された場合には、フォードにシーズン終了まで指揮を任せる見方が強い。

 

 一方、会長のワンマンぶりには慣れている感のある選手たちも今回は直接被害を被り、「お前たちはプロD2(フランス2部リーグ)のチームのようなプレーぶりだから、移動もそれなりにする。飛行機はおしまいだ」と、新たにアウェイで勝利するまではバス移動という憂き目にあっている。

 

 「トゥールーズで勝てとまでは言わない。でも、内容のあるゲームをして欲しい。選手たちにはこのコーチ陣に残って欲しいという意志を示してほしい」と語ったブジェラル。レキップ紙の報道に関してはすぐに「 3試合で新監督をクビにするほど駄々っ子じゃない」と否定してみせたが、すでに新しいシナリオは書き上げられているかもしれない。

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